最高金賞を連続受賞で注目される新潟『伝衛門』 新米杜氏を支えた醸造試験場の助け
新潟市北部、越後平野にある越後伝衛門は、コンペでの数々の受賞歴が注目を集めている。
■失敗続きの杜氏修行
とは言え、先代杜氏のいた頃には手伝いばかり。習った、というほどのこともなかった。 手伝っていただけで一人立ちするのは、ハードルが高かったのではないかと推察される。
というのも、この蔵の特徴は酒米ではなく飯米を使い、麹菌には、秋田今野商店のものを使っている。
「私はこの蔵しか知りませんので、当たり前のことだと思っていました。『清酒学校』にも行かせてもらいました。講師には、実際に酒蔵で働いている現役の方や経営者の方も多く、とても勉強になりました。
一方で、設備などが違うこともあり、学んだこととこの蔵では勝手が違い、やっぱり自分のやりかたでいくしかないとも思いました。
ただ、この時に新潟県醸造試験場の先生たちと知り合うことができたのは、後々で、とても助けになりました。なにしろ、ありとあらゆる失敗をしましたから。
その都度、電話でアドバイスをいただきました。1日に1回どころではない3回ということも。最初の3年くらいは、そんな状態でした」
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■親身の指導が力に
何かトラブルがあると、それまでの経過とデータを詳細に聞いて、対処法を細かく指示してくれたそうだ。
「待ったが効かないとも多かったので、ほとんどその場で判断して指示してくれることが多かったですね。研究所に戻って試してから、ということもあったし」
素材だけに頼らない日本酒は、リカバリーできるところが強みだ。どの職員も、親身に的確に指導してくれた。
そんな挑戦と失敗、工夫と修復を何度も繰り返して、どんどん腕を上げていった。
「仕込んだのに全く発酵してこないということもありましたね。じつは、『仕込んだつもり』、だった。分量の割合が違っていたのです。酒を造っている実感が出てきたのは、この3〜4年ですね。
最初は、麹だけでも酒米を、と思ったこともありましたが、今では『酒米を使うよりおいしい』と言っていただけることもある。頑張ろうと思いますよね」
と話す。厳しい条件だったからこそ、腕をあげた尾崎杜氏だった。蔵元が進めるお酒を紹介しよう
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①『純米大吟醸伝衛門』
飯米のこしいぶきを60%精米で使用。酸が高めで、やや甘め。米の味わいがしっかりありつつ、軽やかでキレも良い。
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②『無濾過生原酒 桶取傳衛門 純米吟醸』
全量、新潟県産のこしいぶきを使用。、アルコール度も17~18%とわずかに高めの無ろ過生原酒なので、インパクトのある飲み口。フルーツのように華やかな香りで、キレ良し。
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③ 『純米大吟醸<文>』
2016年6月に発表すると、その年の「全国燗酒コンテスト」最高金賞に。翌年は、「ワイングラスでおいしい日本酒アワード2017」でメイン部門金賞を受賞、と、オールラウンダーぶりを発揮した大吟醸。
華やかな香りとまろやかですっきりした飲み口と単純にはいかない個性のある味と香りが楽しめる。
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(取材・文/Sirabee編集部)