郷愁と安らぎの魚沼の里 米と自然を活かす『八海山』の技
八海醸造がつくる『八海山』といえば、全国でも屈指の人気と知名度を誇る。
創業1922年。100年以上の歴史を持つことが珍しくない酒造業で、100年未満の酒蔵はまだ若いほうに入る。それでいて、老舗酒蔵のような風格と、県内では上位の出荷量を誇る揺るがぬ人気。
その一方で、古きに縛られないフットワークの軽さか、幅広い事業と海外展開でファンを驚かせ、喜ばせる。いつになっても目が離せない存在だ。
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■ライバルであり仲間である酒造家たちと切磋琢磨
1953年、国税局を退職した田中哲郎氏を指導員に迎え結成された「研醸会」に、杜氏創業から約30年だった八海醸造創業者にして初代の南雲浩一氏の姿があった。
杜氏たちへの酒造り指導とともに、蔵ごとの年間計画も立て、酒造家としての経営方針や精神も説き、恐ろしいほどに厳しいと言われた田中哲郎氏。
その指導を真正面から受けて初期の時代を過ごしたことは、同社にとって、決して、影響少なからぬようだ。
米の少ない時代に磨くことを提唱し、吟醸造りを叩きこまれながら、それを学びの場と捉え、実践である、自社の酒造りの場では、普通酒中心の方針を変えずに今に至る。
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■機械化も進む清潔な蔵
主力である普通酒~特別本醸造が、生産量全体の8割という。 工場のように各仕事場が機械化されて、清潔で広々とした酒蔵。ほぼ不自由のない状態まで完成しているという。
けれど、機械化が目的ではない。機械だろうと、手造りだろうと、美味しい酒のために、必要なものを揃える。 例えば、入ってすぐの洗米浸漬機。動き続ける機械の傍には、担当者がたった一人だ。要所要所で手を添える。
米の品種、その年の水分量、前回造った時の状況などから杜氏が必要な数字を割り出すが、米の状態を見ながら微調整する必要もある。機械化とはいえ決して楽な仕事ではなさそうだ。
とくに麹造りは酒造りの工程で最も重要な部署。八海醸造で最もこだわった麹造りを行っており、蔵内で1日に必要な労力の1/3が、この麹造りだけに費やされている。
四季醸造もできる設備にはなっているが、その予定はなく、酒造りは10月から5月いっぱい。機械と人間のメンテナンスのための時間を取るために、あえてオフシーズンを設けているという。