広瀬香美、事務所が「芸名使用禁止」を求める 芸名の継続使用について弁護士の見解は
事務所移籍を発表した歌手・広瀬香美。かつて所属していた事務所から「芸名使用の禁止」の抗議が寄せられたが、弁護士の見解は…。
■芸能事務所の請求は認められない可能性が高い
河西弁護士:法律上「芸名権」というような明確な法的権利があるわけではありません。もっともタレントの芸名については芸名それ自体に経済的価値があります。なのでタレントが所属事務所を離れる場合「タレントがその後も芸名を継続使用できるのか」がよく争われます。
芸能事務所とタレントは専属マネジメント契約という名称の契約書を結ぶことになります。ほぼ全ての契約書において「芸名についての権利は所属事務所が持つことする。」「芸名が本名の場合においても同じとする。」という内容になっています。
そうすると芸能事務所がタレントに対して芸名の継続使用を禁止するように求めることができることになりそうですが、今回仮に訴訟になった場合においても事務所の請求が認められる可能性は低いといえます。
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■独占禁止法違反の可能性
河西弁護士:昨今、国民的アイドルといわれるグループの退社や有名タレントにおける退社後の芸名の継続使用が話題になるなか、公正取引委員会において「芸能事務所が芸名も含めたタレントの権利を独占すること」は独占禁止法に違反する可能性があるという旨の報告書が公表されました。
このように芸能事務所とタレントとの契約が問題になるとともに、専属マネジメント契約の独占禁止法違反が示唆されている昨今の時代背景において、裁判所が専属マネジメント契約の有効性を認めて芸名の継続使用を禁止する可能性はかなり低いといえます。
今回のケースでは、芸能事務所は「事務所社長が命名した芸名だから」ということを根拠にしているようですが、裁判の結論が変わることはないでしょう。そもそも数十年も前に「誰が命名した芸名なのか」を裁判で立証することは現実的ではありません。仮に事務所が命名したと認定されたとしても、結局、契約書そのものが無効と判断される可能性があり事務所がその権利を独占するということは認めらえないでしょう。
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■商標出願されている場合は
河西弁護士:元モーニング娘。の加護亜依さんのように芸能事務所が芸名について商標権を有しているケースもあります。しかしこの場合においても、本人には先使用権というのがあり、芸能事務所が権利を独占し本人の使用を禁止できるわけではありません。
今回のケースについては特許庁のウェブサイトを確認すると「広瀬香美」という芸名は商標出願されていないようです。今後、広瀬さんがかつて所属していた芸能事務所が商標出願することも考えられるところではあります。
しかし、芸名の権利について問題になることが多々ある時代背景もあり、特許庁においても芸名の商標出願についての審査は慎重になってきています。特許庁が芸能事務所による芸名の商標出願を判断する際、その出願の際にタレントの意思を確認する運用になってきています。そうすると、契約時の契約書に「芸名については芸能事務所が商標出願できる」と記載してあっても商標登録が認められない可能性が高いといえます。
「冬の女王」として多くのファンに親しまれている広瀬。これからも同じ芸名で活動するほうが、本人やファンにとっても好ましいと思うが、はたしてどのような展開になるのだろうか。
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