「みなし残業60時間」で会議はすべて定時以降 裁量労働制を悪用するブラック企業の手口とは
60時間のみなし残業代、打ち合わせは通常営業時間が終わった後…というブラックな人材企業。その実態とは…。
■60時間のみなし残業代と未払い賃金
早野弁護士:「みなし残業」が固定残業代制の意味である場合、60時間分の固定残業代の合意は無効となる可能性があります。
なぜならば、厚生労働省の告示(「労働基準法36条1項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準」3条1項)が、1ヶ月の残業時間の上限時間を原則45時間と指定しているためです。
現行法上は、当該告示に法的な拘束力がなく、裁判例においても判断が分かれていますが、2018年に改正された労基法36条4項によると、残業時間の上限として、原則、月45時間、年360時間を原則とする旨が法律上明文化されました。
この改正により、これまで判断の分かれていた固定残業代の上限時間が法律上明記された45時間となる可能性があります。
改正労基法の施行はまだですが(2019年4月1日施行)、現時点においても60時間分の固定残業代については、45時間を超える部分についてその有効性が否定される可能性はあり、その場合は、未払い残業代が発生していることになります。
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■会社には労働者の健康を配慮する義務
早野弁護士:会社には安全配慮義務があり、労働者の健康に配慮する責任があります(安衛法3条1項、労働契約法5条)。
人材教育は、長時間の残業に由来する精神論的なものではなく、ましてや、残業について「自己研鑽だ」から残業代を払わなくてよいなどという理屈が通る道理はありません。
前述のとおり、この会社では全社的な長時間労働の実態があるようであり、その結果として、労働者が健康を害した場合には、会社は責任を問われることになるでしょう。
働き方改革が叫ばれる今日において、「ワークライフバランスなんてものは間違っている」との社長の発言は慎まれるべきでしょう。人材会社はまさしく「人材」に価値を見出しているわけですので、自社の労働者(人材)を大切にしていく必要があるのではないでしょうか。
なお、日本リーガルネットワークは、6日まで新たに「ブラック企業エピソード」を募集している。
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(取材・文/しらべぇ編集部・タカハシマコト 取材協力/日本リーガルネットワーク)