「内定者インターン」から「週7始発帰り」の地獄へ 他人ごとではないブラック就活の罠
正社員として入社する前、まだ学生なのにもかかわらず「週6日出勤」を求められた時点で気づければよかったのだが…
■最低賃金を大幅に下回る
ポイントは「インターンが労働者にあたるかどうか」と、早野弁護士は指摘する。
早野弁護士:ゆいさんの場合は、会社側が作成したシフトに基づく勤務を命じられていること、「慢性的に人手が足りない開発部署に放り込まれ」て正社員と同様の労務に従事させられていること等から、労基法上の「労働者」に該当する可能性が高いでしょう。
そして、「労働者」に該当する場合、労基法、労働契約法、最低賃金法などの労働法規制に保護されることになります。
ゆいさんの場合では、8時間未満の勤務は4,000円/日、8時間以上の勤務は8,000円/日の賃金の支払で、かつ、勤務時間は7時間または12時間とのことですので、時給換算で571円~666円となるため、最低賃金を下回る賃金しか支払われていなかったということになります。(※例えば、平成30年12月現在の東京都最低時給は時給985円です)
また、1日8時間以上又は週40時間以上労働した場合には、残業代も支払わなければなりません。ゆいさんは、これらの最低賃金との差額や残業代を会社に請求することができたということになります。
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■長時間労働とストレスによる深刻な健康被害
また、正社員として入社して以降の勤務環境にも大きな問題を指摘する。
早野弁護士:週7日始発帰りといった激務が、ゆいさんの健康に深刻な影響を与えた点は、容易に想像できるものです。また、上司に毎日2時間拘束され罵声を浴びせられるなど、蓄積されたストレスも少なくはなかったことでしょう。
長時間労働に関しては、一般に「過労死ライン」と呼ばれるものがあります。過労死ラインは、厚生労働省の通達「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について」(平成13年12月12日基発1063号)を根拠とするもので、長時間労働における健康リスクを測る基準として広く認められています。
この基準によると、疾患等の発症前の1か月間の残業時間が100時間を超過するか、発症前の2か月平均・3か月平均・4か月平均・5か月平均・6か月平均のいずれかで、1か月間の残業時間が80時間を超えると、健康上のリスクが高まるとされています。
■過労死ラインを超過か
常軌を逸した残業時間は、過労死につながる恐れもあった。
早野弁護士:ゆいさんの場合には、週7日始発帰りとのことから、ゆうに月100時間を超える残業を行っていたものと推察され、過労死ラインの基準に該当する可能性が高いでしょう。
また、精神障害の労災認定に関する厚生労働省の通達「心理的負荷による精神障害の認定基準について」(平成23年12月26日基発1226第1号)においては、精神障害を発症した労働者の発症前1か月間の残業時間がおおむね160時間以上を超えること、発症前2か月間の残業時間が、1か月あたりおおむね120時間以上であり、業務内容からその程度の残業が必要だったこと、又は発症前3か月間の残業時間が、1か月あたりおおむね100時間以上であり、業務内容からその程度の残業が必要だったことのいずれかが認められる場合には、業務による強い心理的負荷があったと基本的に認められることになっています。
ゆいさんは、これらの基準に該当する長時間労働によって、心身を害したということですので、業務上の疾病として労災補償の対象となりますし、また、会社に対して安全配慮義務違反等による責任を追及できた可能性が高いでしょう。
なお、日本リーガルネットワークは、今月31日まで、新たに「ブラック企業エピソード」を募集している。
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(取材・文/しらべぇ編集部・タカハシマコト 取材協力/日本リーガルネットワーク)