東日本震災直後に妻と息子が海外逃亡? 未だに続く悪質デマに枝野幸男氏が反論
災害時に繰り返される悪質なデマ。フェイクであることが証明された後も、「フィクション」などと謳って繰り返されるものもある。
震災が起こるたびにデマが拡散されるものである。いわゆるフェイクだ。たとえば、2016年の熊本大地震のときに、 「熊本の動物園からライオンが逃げた」という写真入りのデマ情報がTwitterで拡散され、同県の動物園に問い合わせが殺到する事態があった。
あるいは、東日本大震災では、人工地震・地震兵器が原因というトンデモ説が出回ったし、米を水に数日間浸し、その乳酸菌とぎ汁を飲めば内部被曝した放射能が体外に出て行くという疑似科学も流行った。
危機的状況に、人心を惑わすデマを流すのはまことに卑劣な行為である。
■「震災で枝野幸男氏らの家族が海外逃亡」というデマ
震災時のデマには特定の個人を狙ったデマも流れる。東日本大震災では、不眠不休で事故対応にあった枝野幸男官房長官(当時)の妻と子供が海外に逃亡したというデマや蓮舫行政刷新相(当時)の子供が海外に逃亡したというデマが広く流布した。
官房長官会見でも、デマを信じた記者から何回にわたっても枝野氏に質問が出たという。けっきょく、このデマは枝野氏が「訴訟も検討する」と宣言したために、徐々に下火になっていた。
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■亡霊のように蘇るデマ
しかし、枝野氏が安倍政権を厳しく追及するようになって目立ってから、このデマがまたぞろ、出てきたのである。
講談社が昨年末に出した、「元警察キャリアが書いたリアル告発ノベル」と謳った小説『官邸ポリス』の中に、そのデマがまるで事実であるかのように緻密な描写で出てくる。それを信じた記者が2月28日の枝野氏定例会見で次のように質問した。
「東日本震災直後に、蓮舫氏と枝野代表の家族が海外に逃亡したという話が流れた。それは官邸に関する小説でも出てくるエピソードです。私は蓮舫氏の自宅を訪問し、夫や子供たちが日本にいるのを確認しました。
しかし、枝野さんのご家族は確認できなかった。そこで、伺います。実際のところはどうなんですか?」
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■枝野氏「妻は官邸に」と反論
枝野氏は少し声を荒げて次のように反論した。
「現職の官房長官の時から何十回と応えておりますし、そんな事実はまったくありません。当時、(妻は)官邸で職員のみなさんに差し入れを持ち込んで、官邸職員のみならず記者さんたちにもお会いしています。
震災直後、統一地方選挙がありましたが、私は事件対応でまったく地元に戻れませんでしたので、私の地元である仲間の大宮の候補者の応援のために(妻に)走ってもらいました。それを多くの皆さんがご覧になっています。
それでもそうしたデマが飛び交っておりましたので、私の妻は選挙区の中で一時期、パスポートを持ち歩いて、海外の出国記録がないことを証明しながら、対応して参りました。
今回はあくまで小説という扱いですので、法的措置をとろうとまでは思いませんけれども、あくまでもフィクションの世界であるということです。
でも、フィクションの世界であるとしても、そうしたデマをまた蒸し返すということは、どこかからの『無言の圧力』なのかな、とは想像していますが、わかっていただけている方には十分わかっていただいていると思います」
「元警察キャリアが書いたリアル告発ノベル」と謳いながら、中身は東日本大震災中に流れたデマを書くなど悪質だと言わざるを得ない。その本を手に取られた方はゆめゆめ信じることなかれ。
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(取材・文/France10・及川健二)