インド仏教界1億5千万人を率いる日本人・佐々井秀嶺氏 密着同行記の著者に聞いた
インド仏教最高指導者・佐々井秀嶺氏の密着同行記『世界が驚くニッポンのお坊さん 佐々井秀嶺、インドに笑う』が上梓された。書籍に込められた願いとは。
インド仏教1億5千万人のトップとして信者を導いてきた83歳の日本男児、佐々井秀嶺氏をご存知だろうか。
若い頃、人生に絶望し3度の自殺未遂を図るものの数奇な運命に導かれ、日本から遠く離れたインドの地で仏教の復興と、差別や貧困に苦しむ不可触民を救うため、半世紀以上も命がけで闘ってきたカリスマ僧侶だ。
そんな佐々井氏がこれまで歩んできた人生とインド仏教の現状が描かれた密着同行記『世界が驚くニッポンのお坊さん 佐々井秀嶺、インドに笑う』(文藝春秋)が上梓された。
しらべぇ取材班は、著者でライターの白石あづささんに、佐々井氏の魅力や本書に込めた想いを聞いた。
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■佐々井秀嶺という男
佐々井氏は、1935年に岡山県で生まれた。青年時代に異常なまでの女性への興味と性欲に苦悩し、度重なる絶望を味わって3度の自殺未遂を経験。死に場所を求めて、さまよい行き倒れていたところを一人の住職に救われ僧侶の道へと進む。
25歳にして高尾山薬王院で得度を受け、交換留学僧としてタイへ行くも、異国の地においても色恋沙汰に巻き込まれ…恥を感じ日本に帰れず逃げるようにして単身インドへと渡る。
その後1年間、日本山妙法寺の八木天摂氏の元で学び日本への帰国を考え始めたころ、「神の御告げ」を聞き、導かれるようにしてインドのど真ん中にある都市、ナグプールヘと向かった。
そこで、目にしたのは、カースト制度において最底辺のシュードラ(奴隷階級)にも入れず、「触れると穢れる」と差別を受ける、不可触民の姿だった。
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■インド国籍も取得
佐々井氏は、平等主義であるインド仏教の思想を根付かせるべく熱心に布教活動を続け、次第に下層民衆の心を掴み「自分たちは人間である」と訴えた。
村や町に寺院を建て、貧しい仏教徒のための学校や無料の養護院や病院を次々と設立し、その名声は高まっていったが、1987年にビザが失効し不法滞在で一時逮捕されてしまう。しかし、佐々井氏の活動を見てきた市民たちによって、わずか1ヶ月で60万人分の署名が集まり、翌年にはインド国籍を取得する。
その後も、度重なる暗殺の危機に晒されながらも民衆とともに闘い続け、2003年にはインド政府の「少数者委員会」の仏教徒代表に任命され、いくつもの仏教組織の代表を務め、名実ともにインド仏教最高指導者となったのである。