インド仏教界1億5千万人を率いる日本人・佐々井秀嶺氏 密着同行記の著者に聞いた
インド仏教最高指導者・佐々井秀嶺氏の密着同行記『世界が驚くニッポンのお坊さん 佐々井秀嶺、インドに笑う』が上梓された。書籍に込められた願いとは。
■悪魔祓いで使うのは…
インド仏教の頂点に立ち、差別や貧困に悩まされる不可触民に寄り添い半世紀以上も共に闘ってきた佐々井氏。しかし、民衆の支持が高まり、激増する仏教徒を恐れた他宗教の過激派は、佐々井氏の悪い噂を立てたり、暗殺を目論むようになった。
実際、白石さんは2度目のインドでの密着取材を実施した短い期間に、暗殺や陰謀渦巻く現場に同行することになる。サスペンスドラマさながらの緊張感の中で、特に驚かされたことは一体、何だろうか。
白石:他宗教の過激派だけではなく、同じ仏教徒の高僧も、目の上のタンコブである佐々井さんを狙っています。ですから、仏教集会といえど気が抜けません。
過去には、飲み物に毒を入れられたり、舞台を壊れるように作ってあったり、何度も死の淵をさ迷ったことがあるそうです。今回、取材で、暗殺や陰謀渦巻く場所に同行するのは怖かったんですけど、こんなおもしろいこともありました。
近所の男に呪いをかけられた娘さんを救うため、佐々井さんは悪魔払いの仕事を引き受けたんですが、普通にベッドの上であぐらをかいて座って、「なんか取り出した」と思ったら孫の手!
それでインド人の頭を木魚がわりにポコポコ叩き始めたので、びっくり。「なんで孫の手ですか?」って尋ねたら「背中もカリカリできるし、あれでインド人の頭を叩いてやると不思議と痛みが治まるらしいぞ」と。
インド人は孫の手を魔法の杖か何かに思っているらしく…中には「孫の手で叩いてくれ」と頼んでくる人もいるそうです。本当の使い道がインド人にバレたらどうするんだろうと、おかしくてたまりませんでした(笑)。
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■本物のお坊さん
本作に登場する佐々井氏は、時には虎のように鋭い眼光で1億5千万人の信者を束ね、時には好物のうどんを無邪気に食べる姿を見せるなど、実に多彩な表情で描かれている。白石さんにとって佐々井氏とは、どのような人物なのだろうか。
白石:偉大な人で本当に「奇跡的に生まれた人」だと思います。佐々井さんは「宗教を問わず、すべての宗教の真理は一つで世界平和である。差別しろとも、戦争しろとも言っていない」と、ずっと訴えていてぶれない方。
もともとは、「女狂い」で向上心も強くて…すごく欲の強い方だと思うんです。でも、お坊さんになると固く決意してからは、その欲望を抑えていて。
とはいえ、現地で私が作った料理をおいしそうに食べてくださるんですが、途中でハッと気づいて「コラ! 俺の飯を作るよりもきちんとお前の使命を果たせ」と怒るんです(笑)。大好きな日本食を嬉しそうに食べている自分が食欲や欲望に負けていると感じるんでしょうね。
佐々井さんと身近に接していると、人間臭い部分や欲望と葛藤している部分もたくさん見えてきます。そこも全部ひっくるめて「本物のお坊さんだな」と思います。