今、激アツの格ゲー×お嬢さま 漫画『対ありでした』からその魅力を探る
ネット上で密かに注目を集めているジャンルが、格ゲー×お嬢さま。人気作品から同ジャンルの奥深さを探る。
■「格ゲー」という文化から生まれる言葉
言うまでもないことだが、「流行語」や「スラング」は、ムーブメントやカルチャーの中から生まれるものである。現在は家庭での「オンライン対戦」が主流になりつつある格ゲーだが、その根底にあるのはやはりゲームセンターの文化。
かつては「不良の巣窟」という印象の強かったゲーセンも、現在ではかなりクリーンなイメージに落ち着きつつある。とは言え「対面にいる相手を負かしてやりたい」という格ゲーマーの本質は当然変わっていないため、「刹那的な略語」や「ゲームキャラクター」に因んだゲーセンスラングが現在に至るまで数多く生み出されているのだ。
白百合の煽り文句に登場した「屈伸」とは、レバーを上下させることで使用キャラクターのモーションを「立ち」と「しゃがみ」に素早く入れ替える行為のこと。その動きからいつしか「屈伸」と名付けられ、万国共通で対戦相手を煽る侮辱的な行為と捉えられている。
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■お嬢様と格ゲー
そんな荒々しい格ゲー文化とお嬢様が、融合を果たす日が来ることを予想した各ゲーマーなどいただろうか。
TVアニメにもなった漫画『ハイスコアガール』では超がつくお嬢様にして最強の格ゲーマー・大野晶が登場するが、こちらは終始無言のため、言葉で相手を煽り散らすという行為は見られなかった。
また大野は主人公の少年・矢口春雄とゲーセンを軸にした甘酸っぱい青春を繰り広げていくが、『対あり』では美少女2人による「百合展開」が繰り広げられるのも大きな違いだろう。
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■作品の本質的な魅力
しかし同作は百合要素が目立って強いというわけでなく、格ゲー要素も力が入っているのだが、ガッツリ掘り下げているわけでもない。人によっては「中途半端」に感じる読者もいるかと思うが、このバランス感覚が絶妙なのだ。
むしろ作品の根幹にあるのは、「お嬢様でありながら自分のやりたいこと(格ゲー)に心から夢中になれる」白百合と、「お嬢様に近づくため自分の好きだったもの(格ゲー)を遠ざけた」綾の対比であろう。
現在はeスポーツという言葉も生まれて格ゲーの地位が大きく向上したことは間違いないが、まだまだ大多数の人にとってゲームとは「いつか大人になる過程で卒業するもの」である。
一度格ゲーを捨てた綾は白百合と出会うことで再び「明日のためじゃなくて、何かのためじゃなくて、理由もないのに全力だった」かつての自分を思い出す。年齢や仕事、周囲の目など外的な要因を理由に、自分の大好きだったものを手放した経験がある大人にこそ、読んでほしい作品だ。
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(文/しらべぇ編集部・秋山 はじめ)