接種する医師に賠償責任? 新型コロナ「ワクチン安全証明書」なる怪文書が出回る
国内でもスタートした新型コロナウイルスのワクチン接種。しかし医療関係者の間では不可解な書類が出回っているという。
■「努力を無下に」との思いも
こうした書類が出回っているという医療関係者の間では、どのような評価をされているのだろうか。
A医師:あまりに馬鹿げた文章ですので、そこまで気にしている人はあまりいません。そもそも我々医療者は国民の健康を考えて新型コロナウィルスワクチンを推進しているというだけで、ワクチン接種に強制力はそもそもありません。
政府は接種努力を掲げていますが、どうしても受けたくない人は受けなければ良いだけなのです。ただ、我々の努力を無下にされているようで腹立たしい気持ちはあります。
関連記事:大阪市立病院看護師がワクチンや注射器を盗み自身の子供3人に接種 病院機構に聞いた
■対策の難しさを痛感
では、こうした書類が出回ることの問題点は、どこにあるのだろうか。
A医師:もちろんこのような文章に法的強制力はありませんし、このような文章にサインする医師はまずいないでしょう。ただ、このような文章が極論派から回ってくるということ自体にこの病気とその対策の難しさを感じざるを得ません。
日本では幸いにして欧米と比較してそこまでの多大な被害がある訳ではありません。罹患した際の死亡リスクは欧米と同様に非常に高いのですが、そもそも欧米と比較して患者数そのものが少ない。その理由については未だに分かっていません。
清潔概念、国民の自粛努力、島国という特性、遺伝的要素(いわゆるファクターXと呼ばれるもの)など色々考えられることはありますし、それらの複合的要素かもしれない。
しかしながら、日本の被害が少ないことにより、むしろワクチンの必要性に対する疑問を呈する人が日本には多いのです。周囲にコロナウィルスで苦しんだ人があまりおらず、しかも実際に患者を診たことがなければ、この病気がいかに恐ろしいかを実感できないのです。
関連記事:新型コロナワクチン接種開始 河野太郎大臣のツイートに反響集まる
■歪められた情報が自己完結
SNSなどの特定コミュニティでこのような歪められた情報が拡散し、信じられてしまうことも懸念するA医師。
A医師:アメリカで経験した酷い現状をいくら言っても『我々は日本のことについて議論している』と取り合わない人も多く、自粛そのものにも疑問を呈する人も多い。そして、ワクチンしかこの「自粛と解除の行ったり来たり」を解決する方法がないことを理解できないのです。
そして、そもそも新型コロナウィルスが存在しないという馬鹿げた極論をぶつ人まで存在する。彼ら極論をぶつ人たちは、SNS、YouTubeといった限られたコミュニティから得られた歪められた情報の中でこの病気を自己完結していて、彼らにとってはそれが正義なのです。
全くの善意でこういうことを行っているのです。この文章自体よりむしろそれが非常に恐ろしい。国民の大多数に接種しないとコロナ禍は収まらないでしょうが、医療者でさえもワクチンを拒否する人がいるようで、国民の十分な理解が必要と改めて思います。
・合わせて読みたい→新型コロナワクチン接種開始 河野太郎大臣のツイートに反響集まる
(取材・文/しらべぇ編集部・タカハシマコト)