政府有識者会議で女性宮家・女系天皇の議論は進むのか? 金子宗徳・亜細亜大学講師に聞く
菅義偉首相の呼びかけで招集された、皇位の安定継承のための有識者会議。どのような議論が展開されるのか、右派の論客に聞いた。
■女系天皇でも国体は破壊されない
金子氏は右翼の論客であるが、女性宮家・女系天皇について先駆的な提言をする。
金子:なお、私個人としては、女性皇族が御結婚後も皇室に止まって女性宮家を創設して場合によっては天皇に御即位されても、ひいては、女系すなわち母方でのみ皇室に繋がる女系天皇容認が即位されても、皇室と国民との一体性、難しい言葉で言うと「国体」が破壊されることはないと思っています。
ただ気になるのは、夫婦別氏(別姓)制度との関係です。現在の制度では、民間の女性が皇族男子と御婚姻されると、その女性は皇族の一員となるために氏を失います。
それに倣えば、女性宮家が創設された後、民間の男性が皇族女子と御婚姻されると、その男性は氏を失うわけです。それゆえ、中国で何度も起こった「易姓革命」にはあたらず、皇室の血統は断絶しないと考えられるわけです。
けれども、たとえ選択式であるとしても夫婦別氏(別姓)制度を採用したら、将来的に、皇族の男性(女性)と民間の女性(男性)との姓・氏が異なるという事態が生じかねません。
そうなったならば、両者の間に生まれた御子は姓・氏を有するのでしょうか、それとも有さないのでしょうか。また、その御子が天皇となられた場合、それは「易姓革命」にならないのでしょうか。
こういう新たな問題が生じかねません。ですから、選択式夫婦別氏(別姓)制度を導入すべきでない、と私は思っています。
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■旧宮家末裔の皇族復帰は難しい
—旧宮家末裔の皇族復帰へのお考えを聞かせてください
金子:いわゆる旧宮家は、室町時代に現在の皇室と別れた伏見宮の流れを汲みます。江戸時代に後桃園天皇が皇子を遺すことなく崩御された際、伏見宮邦頼親王の第一皇子が後継者の候補とされるなど、本家筋の血統が絶えた時には皇位を継承することが期待されていました。
それゆえ、明治天皇は皇女と伏見宮系の王子との婚姻を積極的に進め、11宮家が成立したのですが、大東亜戦争に敗れた後、その全ては占領軍の強圧により皇籍離脱を余儀なくされ、国民とされました。
こうした経緯を考えると、当代の天皇陛下の御了解が得られたならば、旧宮家末裔が皇族と認められ、ひいては天皇に即位される可能性はあり得ると思います。
とは言え、「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」という日本国憲法の規定です。
そうした歴史的経緯はあるにせよ、ひとたび国民となった以上、その末裔に皇族としての地位を与えられる(そもそも、皇族であったこともない方が「復帰」するというのは不正確)というのは、「社会的身分又は門地」による差別に当たるという懸念を払拭できません。
旧皇族末裔に皇籍を附与しようとするならば、この懸念を払拭し得る憲法解釈を内閣法制局が構築せねばなりませんが、難しいように思われます。