赤字まみれのローカル線 それでも7割が「残すべき」と叫ぶワケとは…
【鉄道トレンド調査隊】オワコン化へ突き進む地方路線、赤字にあえぐJRの悲鳴。73.0%が「なくなってしまうは、悲しい」と涙の主張をするのには理由があった。
日本の鉄道がオワコンとなろうとしている。世界一の鉄道技術を誇り、かつて鉄道大国と言われたニッポン。しかし人口減少や過疎化にともない、地方ローカル線の利用者は減少の一途をたどる。今年に入り、JR各社は相次ぎ赤字路線を公表し、悲鳴が聞こえてくる。
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■100円稼ぐのに経費2万円以上
今年7月、ローカル鉄道のあり方を議論する国土交通省の有識者会議が、赤字路線の存廃についての提言を示した。1kmあたりの1日の平均利用者が平時に1,000人を下回る路線について、国と自治体、事業者が改善策を協議する仕組みを設けることになった。
利用者の少ない路線は廃線とし、バスや、専用道を使うバス高速輸送システム(BRT)への転換などを検討する。存続させる場合は、観光列車の活用などで乗客を呼び込む策や、線路や駅を自治体が管理、事業者は輸送サービスに従事する「上下分離」について議論する。遅くとも3年以内に結論を出すことが想定されている。
たとえば先月24日、JR東が発表した最新の収支データ(2021年版)によると、1日の平均乗客数が2,000人未満の35路線66線区はすべて赤字だ。赤字額が最も大きかったのは、羽越本線(村上−鶴岡間)で49億9,800万円。収入が最も少なかったのは、久留里線(久留里-上総亀山間)で100万円だった。
また、陸羽東線(鳴子温泉−最上間)は、100円を稼ぐのに経費が2万31円がかかるという絶望的な現状である。(ちなみに陸羽東線は風光明媚でとても素敵なローカル線であり、筆者のお気に入りである。)
なおJR西日本も先月30日に収支(2019年~2021年度平均)を発表。該当する17路線30区間はすべて赤字だった。なかでも芸備線(東城−備後落合間)は、100円稼ぐのに経費が2万3,687円かかることが分かった。
我々は、これをどう捉えればいいのだろうか。
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■7割「ローカル線を残してほしい」の衝撃
赤字だからといって、「じゃあ廃線で。ほなサイナラ」と簡単に切り捨てるわけにはいかない。今年150周年を迎えた鉄道は、これまで地域の足として人々の生活を支えてきた。
JRから名指しされたローカル線を有する各自治体では、会合が開かれるようになった。沿線の魅力をアピールして人に来てもらおうと、さまざまな取り組みを始めるところもある。JR姫新線を利用する高校生は、岡山・真庭市長に存続を求める1,200人分の署名を渡し、ニュースになった。
こうした赤字のローカル線について、全国の人はどう考えているのか。全国の男女600人に対して調査を行った。
「赤字のローカル線は廃止すべきだと思いますか?」という質問に対し、「廃止すべき」が27.0%、「存続すべき」が73.0%。圧倒的に存続を求める声が多かった。
年代別に見てみると、「存続すべき」と最も多く回答したのは30代で78.1%。一方で「廃止すべき」と最も多くしたのは60代以上で40.0%だった。年代ごとに上下はあれど、過半数が「ローカル線を残してほしい」と答えている。
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■本音「乗らないけど、残してほしい」
赤字路線について、みんなどんな考えを持っているのか筆者の周りに取材を行った。30代女性は「地元の広島の路線が赤字らしい。高校のときに毎日乗った思い出がある。なくなってしまうは、悲しい」と話した。
また「ローカル線は、古き良き日本の風景という感じですからね。無くなってほしくないですね」という40代男性も。実際に「乗ることはあるか」と聞けば、「ないですね……」と回答し、気まずそうな表情を浮かべた。
鉄道ファンの40代男性は「皮肉なことに、普段は利用しないけど、廃線が決まった瞬間に、鉄道ファンがどっと押し寄せるのはあるあるです。『こんな良い路線を廃止にするなんて!』と口を揃えて言うんですが、まぁ普段から利用していれば赤字になることもないわけで。難しいっすよね」と複雑な表情。
さらに50代男性は「鉄道は国防においても重要な位置付けだ」と指摘。「現に、ウクライナの戦争でも鉄道は活躍していると聞く。仮に北海道にロシアが攻めてきたとき、線路が使えなかったら、武器や弾薬が運べなくなるかもしれない。それでもいいんですか?」と、興奮ぎみに答えていた。