2023年「世界経済」の展望は暗い 戦争、コロナ、インフレが日本経済にも影響
【舛添要一『国際政治の表と裏』】IMFは先進国における2023年の経済成長率が「低下する」と予想している。日本はどうなるか。
IMF(国際通貨基金)が昨年10月に発表した経済成長見通しによると、2022年が3.2%、2023年はさらに下がって2.7%である。2021年は6.0%だったので、その低下ぶりが分かる。とくに先進国の経済成長率の低下が顕著で、2021年に5.2%だったのが、2022年が2.4%、2023年が1.1%である。
日本は、それぞれ1.7%、1.7%、1.6%である。デフレの日本は、そもそも低経済でこの25年間を過ごしてきている。一方、ヨーロッパの落ち込みはとくにひどく、2023年は、ドイツが -0.3%、イタリアが -0.2%とマイナス成長になっている。
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■原因はウクライナとコロナ
このような経済成長率の低下は、ウクライナ戦争と新型コロナウイルスの流行がもたらしたものである。昨年2月24日にロシアの侵攻によって始まった戦争は、停戦の見通しが立たないまま年を越した。戦闘の激化と西側諸国による経済制裁の影響で、石油や天然ガス、小麦などの供給が減少し、世界経済を混乱させた。
とくにヨーロッパは、ロシアに天然ガスの供給を依存している。また、地理的に隣接していることもあってウクライナからの難民を受け入れている。さらに、武器供与をはじめ様々な支援を行っている。これらは、大きな財政負担となっており、それが経済成長率を引き下げているのである。
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■コロナがブレーキかけた世界経済
世界経済を減速させているもう一つの大きな要因は、新型コロナウイルスの流行である。2019年末に中国の武漢で発生したこのパンデミックは、人々の経済活動を減速させ、生活にも大きな支障を来した。
経済とは人間の活動であり、人々の移動が封じられると、経済活動は低下する。コロナ前の日本は海外からの観光客が激増し、観光業、ホテル業、飲食業などの業種は盛況を極めた。ところが、コロナ流行による渡航制限などの影響で、一気に不況に陥ってしまった。その他の業種でも、コロナは大きなマイナスをもたらしたのである。
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■中国のコロナ感染爆発
2022年になって、ウイルスが弱毒化し、欧米先進国ではノーマスクが普通となり、次第に規制も緩和されていった。
ところが、習近平政権が12月にこれまでのゼロコロナ政策を転換し、規制緩和に踏み切ったのである。その途端に、中国では新型コロナウイルスの感染が再拡大した。人口の2〜3割が感染しているとも言われ、中国在住の日本人3人が感染して死亡したというニュースも入ってきた。医療機関の少ない地方では、医療が逼迫する状態も生まれている。
問題は、中国から新しい変異株が生まれ、それが強毒性のものであれば、また3年前に引き戻されてしまうということである。このリスクがどうなるかが、今後のパンデミックの行方を左右する。
しかし、中国の場合、ワクチン接種率の低さ、中国製ワクチンの性能などが問題であり、ウイルスがまた世界的に猛威を振るうという可能性は少ないだろう。うまく行けば、WHOは今年中に終息宣言を出す可能性があり、そこから景気回復への展望を開くことができるかもしれない。