トイレットペーパーで見る経済学 「ダブル」が多数派なのはなぜか?
【得する経済学】日本ではトイレットペーパーはダブルが多数派です。清潔を好む日本人らしい傾向ではありますが、そこに隠された経済学にお気づきですか?
「2枚重ねは清潔の基本です!」
1970年代にテレビで流れたトイレットペーパーのCMです。不思議なことにググっても検索にヒットしないのですが、確かにそのようなコマーシャルが一時期、テレビで放送されたのです。
それまでトイレットペーパーはシングルが主流だったのですが、メーカーがダブル(2枚重ね)のトイレットペーパーに力を入れ始めて「より清潔に使いたいならダブルを選んでください」と消費者にアピールしたのです。
■清潔アピールの裏に企業戦略が存在
その後、消費の流れが変わり、今ではトイレットペーパーの売上はダブルの方がシングルをやや上回って優勢になっています。日本家庭紙工業会によれば日本全体でみるとダブルの売上が約55%、シングルが約45%だといいます。
「やっぱりダブル派の方が多数派なんだね」と思うかもしれませんが、そこには落とし穴があるかもしれませんよ。というのは私たち経営コンサルタントがよくクライアントにアドバイスする戦略として、「消費者が使う量を増やすことが売上増につながりますよ」という伝統的なビジネス戦略が存在するからです。
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■ダブルが流行すると「売上」が増える
ちょっと考えてみてください。トイレットペーパーを使うとき、「シングルだからダブルの倍の長さを引き出して使おう」とか考えますか?
街中のショッピングセンターやオフィス、旅行先のホテルなどいろいろな場所でトイレを使う機会がありますが、みなさんはそのたびにトイレットペーパーがダブルかシングルかを確認して使っていますか? ほとんどの人はしていないんです。
人間誰もが、なんとなくいつもの習慣で同じような長さを引き出して使ってしまうのです。そうなると知らず知らずのうちにダブルの方がたくさん消費されて、1巻のトイレットペーパーも早く使い終わってしまいます。トイレットペーパーのパッケージを見るとわかるのですがダブルはシングルの半分の長さしかありません。なにしろ2枚重ねなのですから。
するとどうなるのか?トイレットペーパーの売上はダブルが登場したことでシングルだけだったときよりも増えるのです。
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■関西ではシングルが主流という事実
嘘みたいな話ですが、実はこんな事実もあるのです。日本全国で調査をしてみると東日本と九州ではダブル派が優勢なのですが、実は関西だけはシングル派が優勢なのです。そして理由としては、
「関西人は節約上手だからね」という意見が必ず出てきます。
実はトイレットペーパーのダブルはシングルより薄い紙で作られています。ダブルのメリットは2枚重ねのうえに薄い紙のやわらかい面がどちらも外側になるように作られているので肌に優しい点です。シングルは1枚で使っても破れない少し厚手の紙になっていますが使う面によってはやわらかくない面で肌をこすることになるかもしれませんね。
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■ペーパーには経済性が隠されていた
関西人が節約上手というのはおそらく本当で、実は長さだけではなく厚さの面でもシングルの方がお得なのです。
ちなみにコンサルタントとしての知識をもうひとつ披露すると、コストに厳しいスーパーやショッピングモールのトイレットペーパーはシングル、管理会社が入っているような大きなオフィスビルのトイレもコスト面からシングルを選ぶことが多い傾向があります。というか業務用のトイレットペーパーの大半はシングルです。
唯一の例外が高級ホテル。宿泊の際、トイレにダブルが入っているのは高級ホテルに泊まった証だと思って間違いありませんよ。
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■著者プロフィール
Sirabeeでは、戦略コンサルタントの鈴木貴博(すずきたかひろ)さんの連載コラム【得する経済学】を公開しています。街角で見かけるお得な商品が「なぜお得なのか?」を毎回経済理論で解説する連載です。
今週は「トイレットペーパーはなぜダブルが多数派なのか」その理由についてのお話でした。
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(文/鈴木貴博)