同性婚に関する岸田首相と秘書官の発言について 問題点を弁護士が解説

岸田首相秘書官による同性婚カップルへの発言の問題を、弁護士が詳しく解説。

2023/02/07 15:00


レイ法律事務所・森伸恵弁護士

2月1日の衆議院予算委員会内で、同性婚の法制化について、岸田首相が「極めて慎重に検討すべき課題だ」とした上で、「制度を改正するということになると、家族観や価値観、社会が変わってしまう課題だからこそ、社会全体の雰囲気にしっかり思いをめぐらせたうえで判断することが大事だ」と答弁しました。

その後、岸田首相の秘書官である荒井氏が、首相官邸でオフレコを前提とした取材を受けた際、「(同性婚カップルが)隣に住んでいたら嫌だ。見るのも嫌だ。秘書官もみんな嫌だと言っている」、同性婚の合法化に関しても「認めたら、日本を捨てる人も出てくる」などと語り、秘書官の更迭になるなど、波紋を呼んでいます。



■「なぜ結婚するのか」

私は、異性愛の男女のカップルの場合、「結婚するか」「事実婚でいるか」「彼氏彼女の関係でいるか」等、選択肢を与えられているにもかかわらず、同性カップルの場合、この選択肢すら与えられていないことが問題だと考えています。

結婚する理由は、人それぞれです。

「安心したい」「孤独になりたくない」「心の拠り所にしたい」「社会的に認められた家族になりたい」「子どもがほしい」「遺産が欲しい」など。それぞれの価値観があります。


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■当たり前に得られる権利が受けられない現状

男女間では、お互いの婚姻意思の合致と届出があれば、結婚することができます。

どんな価値観であっても、好きな人ができて交際し、彼氏と彼女の関係ではなく、婚姻届を役所に提出して法律上の夫と妻の関係になり、子どもが生まれて一生を共に過ごすことを漠然と想像しながら、お互いに薬指に指輪をはめる。男女間では、お互いの婚姻意思の合致と届出があれば、結婚できるのである。「なぜ結婚するのか」を考える必要性は求められていない。

日本人が当たり前に得られるこの婚姻という権利を、男性が男性と、女性が女性という組み合わせになると、共に将来を考えた意思があっても、その届出が受理されることはありません。

男性が男性を好きになる、女性が女性を好きになる。

この現象が歴史的に許容されてきた日本ですが、現状、同性間で法律上の婚姻ができる制度はなく、同性間で結婚したいと願っても、海外で外国人と愛を誓える出会いがなければ、叶うことはない。同性間では、お互いの婚姻意思の合致と届出をしても、結婚できません。


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■首相の発言について

首相は、「家族観や価値観、社会が変わってしまう」と発言しましたが、戦前は家父長制が強い婚姻制度でしたが、現行憲法では、結婚する両性の同意のみにより、結婚することができるようになりました。

過去にも家族観や価値観の転換がありました。現在、今の「異性愛の男女のみしか結婚できない」という家族観や価値観を変える時期が来ていると考えるべきです。

また、「慎重な検討を要する」は、本当に継続的に法制審議会で検討会が行われたり、委員会等に有識者を招いて国会議員内においても学んでいくということであれば良いのですが、現状、検討を先延ばしにしているに過ぎません。


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■自治体の動きなど

現在、各自治体が、婚姻に準じた効果を発生させるパートナーシップ制度の導入を進めています。また、同性婚訴訟について、令和4年11月30日、東京地方裁判所は「(同性間の婚姻ができないことは)憲法24条2項に違反している状態」という判決を出しました。

「立法」の側面から法制度の構築をする必要があります。


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■秘書官の発言について

荒井秘書官の発言について、内心でどのようなことを思っているかは個人の自由ですが、秘書官という立場として言ってはいけない言葉。言ってしまうと誹謗中傷になったり、誰かを傷つけてしまう言葉は控えるべきだと考えます。

この言葉を聞いて悲しんでいる当事者もいるはずです。一部の国民のことを否定しているとも言えるのではないでしょうか。

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(文/レイ法律事務所・森伸恵  編集部/熊田熊男

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