若き学生襲う「オワハラ」 過去にはコンプラ無視の内定者“風俗店接待”も…
【常見陽平『過去から目線』】早期化する就活、そして横行する「終わらせろハラスメント」。就活生たちは幾多の困難を乗り越えなくてはならない。
■囲い込みが横行する理由
あくまで体感値ではあるが、このオワハラの相談は2010年代後半の売り手市場でよく見られたが、さらに新型コロナウイルスショックにより拡大したと感じる。
コロナ前は「内定者合宿」「研修」「懇親会」などのように呼び出して、飲み食いもセットしてもてなすなど、リアルな接点を活かした囲い込みが行われていた。ただ、新型コロナウイルスショックではそうもいかない。さらに、オンライン就職で内定を多数獲得できる一方で、入社の決め手がないという状態になる。そのため、オワハラが横行する。
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■内定者風俗接待
歴史を紐解いてみると、オワハラは今に始まったわけではない。以前も過激な内定者拘束、内定辞退の強要は行われていた。
特に80年代後半のバブル期などは、加熱っぷりが伝えられていた。当時のリクルート『就職ジャーナル』には、リクルーターに映画館に連れて行かれる、東京〜新大阪間の新幹線に乗って往復をさせられるなどの様子が描かれていた。
極めつけは、寿司・ステーキ、サウナ、ソープランドという「3S(スリーエス)」接待である。何人、このような想いをした人がいるかは不明だが、バブル期の過剰なまでの採用熱が感じられる例である。
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■職業選択の自由を忘れるな
今ではコンプライアンス的に問題がある。景気がいい話にも聞こえる。ただ、採用活動は常にコンプライアンスすれすれのことが行われ、しかも景気が良いときや、人材採用難の局面ではどんどん過激な囲い込みが行われていた。
バブルが弾けたあとも、就職氷河期を経て、何度かの売り手市場があった。そのたびに、旅行代理店には内定者研修旅行の相談が舞い込む。都心のホテルでの派手な接待も目立った。
コロナ前は海外インターンシップを行う企業もあった。学生に無料で楽しい体験を提供するものだし、学びも大きいのだが、一方、この期間に学生は他社を受けられなくなる。巧妙な手段である。
人手不足、採用難は今後も続くだろう。今後、オワハラは加熱するし、コロナの5類化により内定者接待も復活する。どのような内定者囲い込みが行われるのか。学生よ、職業選択の自由を忘れるな。学生生活を侵害する企業に抗え、たてをつけ。
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■執筆者プロフィール
Sirabeeでは、労働社会学者、働き方評論家である千葉商科大学国際教養学部准教授・常見陽平(つねみようへい)さんの連載コラム【過去から目線】を公開しています。
現代社会で今まさに話題になっているテーマを、過去と比較検討しながら分析する連載です。今回は、この時期の風物詩である「現代の就活と企業の囲い込み」をテーマにお送りしました。
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(文/常見陽平)