Z世代にコロナ世代、ロックダウン世代… 若者を表すワード「○○世代」と認識のズレ

【常見陽平『過去から目線』】何かと取り沙汰される「Z世代」。この「○○世代」「○○型」という呼び方、じっくり考察してみると「実態とのズレ」があることに気づく。

2023/04/01 06:30



■程度にズレがある「就職氷河期世代」

流行語になった言葉は実態から乖離していくこともある。その代表的な例が「就職氷河期」および「就職氷河期世代」だ。この言葉の初出は1992年だ。当時、リクルートが発行していた『就職ジャーナル』に掲載された。その後、1994年に「新語・流行語大賞(現・ユーキャン新語・流行語大賞)」の審査員特選造語賞をとった。

もっとも、不幸なことに「就職氷河期」がより深刻となったのは2000年代前半だった。リクルートが発表する大卒求人倍率が初めて1.0倍をきったのは2000年だ。

さらに、文部科学省の「学校基本調査」で就職も進学もしない人の割合が2割近くになったのも2000年代前半だった。その後もリーマンショックや新型コロナウイルスショックなどが襲うたびに「就職氷河期再来か?」という言葉が使われるのだが、2000年代前半ほどのダメージにはならなかった。このように言葉の意味することは時代により変わることも意識しておきたい。


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■求職者側にも一因

政府は就職氷河期世代の支援事業に力を入れている。

私は複数の地域で関連する事業の講師や評議員を務めている。この問題が深刻であることを認識しつつ、この言葉と実態のズレを感じる瞬間はある。これらの事業の支援対象となる方は、そもそも支援イベントに応募するわけではない。応募数が芳しくないという問題がある。情報が届いていない、現状の仕事が忙しくて応募できない、応募する気がおきない、応募のハードルが高いなどの理由が考えられる。

また、応募する人もこれまで非正規雇用で働いていた主婦が正社員を目指す例などがよく見られる。高校や大学を卒業した後、一度も働いたことがないという像とは異なる。

このように、言葉の意味は常に変化すること。さらには、実態とのズレは意識しなくてはならない。このZ世代は数年後、どのように語れているのだろうか。現状はポジティブだが、マイナスな文脈になっていないか。心配だ。


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■執筆者プロフィール

常見陽平

Sirabeeでは、労働社会学者、働き方評論家である千葉商科大学国際教養学部准教授・常見陽平(つねみようへい)さんの連載コラム【過去から目線】を公開しています。

現代社会で今まさに話題になっているテーマを、過去と比較検討しながら分析する連載です。今回は、「○○世代、○○時代というキーワード」をテーマにお送りしました。

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(文/常見陽平

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