消えゆくクールビズ? 働く人のファッション「多様化」「自由化」を考える

【常見陽平『過去から目線』】クールビズ、カジュアルフライデー、スマートビズ、そして省エネルック……ビジネスパーソンの服装は時代によって大きく変化している。

2023/05/31 05:15

クールビズ

5月だ。今年もクールビズが始まった。と言っても、ほとんど話題にならなかった。

GWスタートと重なったこともあるが、それだけではない。新型コロナウイルスショックによりテレワークが広がり、結果として服装がラフになったことも大きいだろう。さらに、その前からも働き方改革などの流れから服装の自由化が進んでいた。クールビズがいつの間にか風化されているようにも感じる。

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■黒歴史な「省エネルック」

最近、流行りの言葉といえば、JTCだ。ジャパニーズ・トラディショナル・カンパニーの略である。いかにもJTCではダークスーツに身を包んでビジネスをしていると考える人も多いのではないか。しかし、JTCでも服装の自由化が進んでいる。

ここで、ビジネスの服装の変化を振り返ってみよう。どのようにして、服装の自由化が進んできたのか。考えてみよう。

服装の自由化の要因はいくつかある。一つは、エコである。日本は四季がある国であり、夏は暑く、冬は寒い。さらには、ジメジメした梅雨の時期がある。以前はこの環境でもスーツを着て、ネクタイをして仕事をしていた時代があった。この環境でも快適にすごせるように、日本のエアコンは発達した。

一方、電力を消費することはいうまでもない。エコではない。そこで生まれたのが、省エネルックである。1979年に大平内閣が提唱したものだ。半袖のスーツと開襟シャツを着用するものだった。ただ、読んでいるだけで嫌な予感がした読者もいることだろう。そう、圧倒的にセンスが悪かった。失笑ものだった。


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■2005年から広がった「クールビズ」

その反省点を活かしつつ、広がりを見せたのが「クールビス」だ。2005年6月1日、地球温暖化対策の一環として、ノーネクタイ、ジャケットなしの軽装で過ごすクールビズが始まった。

当時の小泉純一郎首相や、のちに東京都知事となる小池百合子環境相らが率先して協力を呼びかけた。当時は、先進国の温暖化ガス排出量の削減目標などを定めた「京都議定書」の発効もあり、注目を集めていた。クールビズはこの年の「ユーキャン新語・流行語大賞」のトップテンに入った。なお、冬のファッションとしてウォームビズも提唱された。服装を工夫して暖房の温度を低くするムーブメントなのだが、ネクタイ業者に配慮したとの説もある。

この展開が決定的となったのは2011年の東日本大震災および福島第一原発事故である。電力不足が懸念され、この年からクールビズのスタートが6月1日から5月1日に前倒しになった。2012年には、ポロシャツやアロハシャツ、デニムもOK、Tシャツも条件つきでOKのスーパークールビズも誕生した。


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■さほど流行らなかった「カジュアルフライデー」

半袖にスラックスというクールビズは、中学校の制服のようにも見えるが、シャツの色やデザインを工夫するとおしゃれに見える。特にスーパークールビズは服装の自由化にも貢献したといえるだろう。エネルギー問題は我が国にとって、大きな課題である。環境への配慮は今後も服装見直しのドライバーとなるだろう。

もう一つは、自由な発想を促すためだ。自由な格好で働くことによって、創造性を高めようという試みである。「カジュアルフライデー」を一部の企業で取り入れ始めたのは、1990年代である。金曜日だけは、カジュアルな服装で働こうという取り組みだ。もっとも、認知は広がったものの、導入が進んだとは言い難い状態だった。

その後、2010年代半ばには働き方改革の波がくる。その流れもあり、金融機関などを含め、服装の自由化が進んだ。さらに、前述したとおり、新型コロナウイルスショックでテレワークが広がったこともあり、オンライン前提でのファッションが広がった。在宅勤務を想定した、ジャケットとカットソーを組み合わせたスマートビズなども提案された。


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■最適ファッションの模索は続く…

美容院・美容室・ヘアカラー

なお、オンライン化がもたらしたものの一つに、ヘアカラーの自由化というものがある。

ホットペッパービューティーの調べによると、2019年から2021年前半にかけて、美容代は約1割増えた。その要因はヘアカラーによるものだ。消費が低迷していた頃の1割増はインパクトが大きい。特に、最近流行している後ろ髪などをカラフルにするインナーカラーなどは、髪を結べばカラーを入れていることに気づかないなどのメリットがあり人気を博した。

この他、IT企業の台頭なども影響を与えているといえるだろう。タートルネックにデニムで新製品のプレゼンを行ったスティーブ・ジョブズに代表されるように、海外のIT企業経営者がラフな格好で人前に現れることに影響を受けてか、日本のIT企業でもジャケットにTシャツにデニムなどで登場する経営者が増えた。楽天の三木谷浩史社長のファッションを振り返ると面白い。元銀行員、MBAホルダー風のスーツ姿が多かったが、だんだんラフになった。

もっとも、コロナも5類相当となり、出勤する頻度も増えている今、さらに服装をめぐるマナーが移り変わる中、ビジネスパーソンは戸惑っているのではないか。どこまでラフな格好がOKなのか、悩む人もいるだろう。自分の服装だけでなく、同僚や取引先の格好がラフすぎて気になることもあるだろう。安心してほしい。みんな、戸惑っている。時代と向き合いつつ、最適なファッションの模索は続くのだ。

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(文/常見陽平

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