自衛隊員が自動小銃を所持したまま行方不明に なぜこのようなことが起きたのか

札幌市にある陸上自衛隊・真駒内駐屯地西岡演習場で自衛隊員1人が自動小銃を持ったまま行方不明になっていた。なぜこのようなことが起こったのか。

2023/06/28 13:45


陸上自衛隊

先日、岐阜県の日野基本射撃場でにおいて、小銃乱射事件で死亡事故を起こしたばかりの自衛隊。わずか短期間でまたも小銃関連事案が発生した。国民の多くが、「なぜそんなことが立て続けに起きるのか」と不安を覚えているのではないだろうか。元陸自幹部の筆者が明らかにする。



■紛失したのは89式5.56mm小銃

まず、今回、隊員が持ったまま行方不明になっていたのは、豊和工業製の89式5.56mm小銃。自衛隊が持っている黒いアサルトライフルだ。それ以外の小銃はこの状況の陸自においてほぼ100%使われていないので、断言しても過言ではない。

筆者は元陸自幹部で、現状を熟知しているので、この危険性は弾の入手方法等よく分かる。5.56mm弾を手に入れるだけで、簡単に凶器と化してしまう。極めて危険だ。


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■この短期間でなぜ持ち出せたのか

つい先日、歴史的な大不祥事ともいえる事件が起きていながら、なぜ銃を持ち出せたのか。それは陸上自衛隊の危機管理能力、レベル、プロ意識の低さではないだろうか。

具体的に言うと、射撃場の入出門のセキュリティも下っ端若手隊員にさせているほどに甘いからだ。筆者は「いつ次の不祥事が起こってもおかしくない」と思っていたが、案の定起こった。自衛隊はなぜこのようなことが起こったかを説明する必要があるだろう。


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■実弾は本当にないのか

「実弾は持っていない」との報道だが、それは恐らく正しい。というのも、自衛隊の射撃では弾の数を日頃から正確に管理しており、このような大事故が起こった状況なので、複数人により数度にわたって確認しているはずだ。よって、その点は安心してよいだろう。

ただし、今後も同じことが起こったとして、5.56mm普通弾が手に入ってしまうと、たちまち殺人用の凶器へと変わる。筆者からすると、5.56mm普通弾を手に入れることは容易である。現場の自衛官を利用した組織的な犯行であった場合、なおさらだ。


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■発見されたが、安心はできない

報道によれば行方不明の隊員は発見されたが、その間に各部品の寸法を押さえ、仲の良い鉄工所に作成依頼をすることも容易であり、「見つかってよかった」と安心するのは早い。そもそも、射撃場で行方不明など起こり得ない。決まった場所以外に行くことはないし、行方不明になるような場所などないため、隊員自らの意思で行方をくらましている可能性もあるからだ。

この短期間で極めて危険な事故を頻発させ、どう国民に説明するのか。どう謝罪し責任を取るのか。惨状を看過することはできない。自衛隊の最高指揮官たる総理大臣以下は急ぎ対策をし、更なる事件の発生を何としてでも防ぐべきだ。このままでは、全国の自衛隊で事件が相次いでしまう。

国民の生命と財産を守る自衛隊によって脅かされる日が来るとは予想だにしなかった。人事編制装備含め組織の大改革を急ぎ、安心して暮らせる日々を取り戻してほしい。


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■執筆者プロフィール

安丸仁史(やすまるひとし):1994年福岡生まれ、福岡育ち。防衛大学校(人文・社会科学専攻)中退後、西南学院大学文学部外国語学科卒業。 2017年陸上自衛隊に幹部候補生として入隊。

職種は普通科で、小銃小隊長や迫撃砲小隊長、通訳などを務める。元レンジャー教官。自称お祭り系インスタグラマー。お祭りとパンクロックをこよなく愛する。

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(取材・文/Sirabee 編集部・安丸仁史

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