ついに日本史上の「キング・オブ・乱」が決定! いちばん有名な「〇〇の乱」は果たして…
『スージー鈴木のニッポンの民意』第8回は、学生時代にみんなが暗記した「〇〇の乱」の中でいちばん有名な「キング・オブ・乱」を消費者調査にて決定したいと思います。果たして、あの乱、この乱、ランランラン、波乱の「乱界」を制するのは、どの乱?
というわけで、今回、ついに日本史上の「キング・オブ・乱」を決定します。あ、先に言っておくと「日本史」なので、「太平天国の乱」(1851年)や「セポイの乱」(最近では「インド大反乱」と呼ばれる。1857~1859年)などは入りません。
ここで気になるのが、そもそも「乱」と「変」の違いは何かということ。これ、いろいろ調べてみましたが、明確な定義の差はないようです。ただ「QuizKnock」のサイトにあった、学習院大学の安田元久氏による分類が比較的分かりやすく、
■「乱」とは?
①政治権力に対する武力による反抗、すなわち叛逆事件
②政治権力の収奪による内乱状態
■「変」とは?
③政治権力者たる天皇・皇族、あるいは将軍などが獄逆・配流などに遭い、(一つの立場から見て)不当な立場に置かれた事件
④政治上の対立による陰謀事件
日本史に詳しくない私には、やや難度の高い説明なのですが、直感的に「乱」の方が「変」よりもロックンロールだという感じがしました。
では、「キング・オブ・乱」の発表に移りましょう。果たしてロックンロールな「乱」のキング、つまりロックンロール・キングはどの乱か。
まず、市場調査のアンケートでは、対象者に聴取できる分量には限界がありますので、「『キング・オブ・乱』審議委員会」(キン乱審)」代表である不肖私が、事前に「ファイナリスト」を決めさせていただきました。
・壬申(じんしん)の乱(672年)
・平将門(たいらのまさかど)の乱(935年)
・承久(じょうきゅう)の乱(1221年)
・応仁(おうにん)の乱(1467年)
・島原(しまばら)の乱(1637年)
・由井正雪(ゆいしょうせつ)の乱(1651年)
・大塩平八郎(おおしおへいはちろう)の乱(1837年)
これら7つの乱、別名「乱・神セブン」それぞれについて、調査対象者に「1.内容をよく覚えている/2.内容をある程度覚えている/3.名前だけ知っている程度/4.名前すら知らない」のいずれかを聴取。
上の2つの選択肢「1.内容をよく覚えている+2.内容をある程度覚えている」の総和ポイントで、ランキングを作成しました。
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■7位~4位…「平将門の乱」76年大河が影響か
では早速、最下位7位から4位までを一気に。
「平将門の乱」が健闘しました。全体では22.2%ですが、60代以上のシニア層では31.1%にまで跳ね上がります。
これはおそらくですが、この乱を取り上げた76年のNHK大河ドラマ『風と雲と虹と』の影響ではないでしょうか。ちなみに平将門を演じたのは若き加藤剛でした。
逆に「由井正雪の乱」は伸び悩み、1割を切る結果。じつは恥ずかしながら、この乱、私もよく知らなかったのです。『旺文社日本史事典 三訂版』によると、
――幕府成立当初の武断政治で多くの大名が取りつぶしにあい,生活窮乏の牢人が増加。1651年,3代将軍徳川家光の死を機に,丸橋忠弥(ちゆうや)らは江戸城を,正雪らは駿府城を奪い,金井半兵衛らは大坂で騒乱をおこして,幕府の政道を改めようとしたが,計画がもれて鎮圧された。幕府はこの事件後牢人対策を重視し,末期(まつご) 養子の禁を緩和し,大名の改易を減じるなど牢人の発生を防ぐ政策をとり,文治政治転換への一契機となった。
うーむ。読んでも今ひとつ、よく分からない。「牢人」の「騒乱」というあたりは確かにロックンロールですが、内容が今ひとつ分かりにくく、思い入れるのが難しいあたりが、ポイントを伸び悩ませたのかもしれません。
ではいよいよベスト3です。
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■3位は10年に及んだ戦乱「応仁の乱」、続く2位は…
まず3位は、出ました「応仁の乱」。
最近では、この乱を扱った本がヒットしました(呉座勇一『応仁の乱− 戦国時代を生んだ大乱』中公新書、2016年)。現代を生きる人々にも興味関心の高い乱だということでしょう。
今一度「応仁の乱」の内容を確かめて驚くのは、
――1467(応仁元)年から’77(文明9)年にかけて,京都を中心に行われた大規模な戦乱(『旺文社日本史事典 三訂版』)
なげー! 何と10年も。これ「乱」というより「らーーーーーん」だわ。
ちなみにNHK大河ドラマでは94年の『花の乱』が「応仁の乱」を取り上げました。細川勝元が野村萬斎で、対立する山名持豊を萬屋錦之介が演じたそうです。
続く2位は、「大塩平八郎の乱」!
――天保の飢饉に際し,貧民救済に尽力した平八郎が大坂町奉行所の無策を批判し,近郷の農民に檄文を回して動員,門下の与力・同心らと挙兵した。大坂市内の豪商を襲い貧民に米・金を与えたが1日で鎮圧され,平八郎は潜伏1か月余り後自殺した(『旺文社日本史事典 三訂版』)
「貧民救済」「無策を批判」「檄文」「挙兵」――こりゃなかなかのロックンロールだ。でも、ちょっと待ってください。たった1日かぁ、短過ぎないかしら?
だからドラマとかになりにくく、2位にとどまったのかもしれない(ただし映画では、この乱を取り上げた『風雲天満動乱』−57年−があったようです。大塩平八郎役は嵐寛寿郎)。
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■キング・オブ・乱は…
ということは1位、どん。「島原の乱」!
何と約半数が「ある程度知っている」という恐るべき水準。2位を大きく引き離し、堂々の1位に輝きました。
あ、これは私も何となく憶えていますよ。『旺文社日本史事典 三訂版』より。
――1637年,肥前(長崎県)島原・肥後(熊本県)天草地方におこったキリシタンを中心とする農民一揆(〜’38)
――天草四郎時貞を首領に3万8,000人の農民が島原の原城址に拠り挙兵。幕府は板倉重昌以下西国大名を動員したが,重昌が戦死したため,老中松平信綱が出馬し,オランダ船に砲撃を要請,兵糧攻めで翌年2月落城させ参加者を皆殺しにした。幕府の動員兵力12万,戦費約40万両。乱後禁教政策はいっそう強化され,’39年鎖国体制を完成させる契機となった。
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■シニア層が7割超え
おぉ、いかにもワイルド&ロックンロール。さすが1位。
個人的には、この乱を取り上げた、81年の映画『魔界転生』が思い出深いのです。天草四郎を演じたのは沢田研二。この映画が強烈だったのか、年代別のポイントを見ると、60代以上のシニア層では何と7割を超える水準になります。
というわけで、「キング・オブ・乱」は「島原の乱」に決定しました。おめでとうございます(誰に?)。
では機会を見て、いつか「キング・オブ・変」を決定したいと思います。「本能寺」かなぁ、「桜田門外」かなぁ?