JRPGへの愛情と理解がすごすぎる! スーファミ世代を直撃する令和の美麗ドットRPG『Sea of Stars』プレイレビュー

『クロノトリガー』光田康典氏も曲で参加。『Sea of Stars』はJRPG愛が突き抜けたレトロなのに全く新しいRPG?

2023/09/10 10:00


ひと口に「レトロゲー」と言っても、今やPS2ですらその範疇に含まれてしまう令和の時代。今回はそんなレトロゲーの中でもとりわけ「SFC(スーパーファミコン)こそ我が魂の拠り所」という人にブッ刺さりそうな美麗ドットRPG『Sea of Stars』をレビューしていく。


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■スーファミ世代を直撃

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本作は8月29日にPC(Steam/Microsoft Store)/PS4/PS5/Xbox One/Xbox Series X|S/ニンテンドースイッチ向けに、『The Messenger』を手掛けたSabotage Studioから発売された。

ストアページを眺めただけでも伝わってくる美麗なドット絵に加え、音楽やシナリオなど総合的にも完成度の高い作品で、発売から1日で10万本を売り上げたことはSNS上でも大きな話題となっている。

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オーバーワールドでは、小さなキャラがかわいらしく動く。

特筆すべきはやはり本作のアートスタイルで、これはSFCやメガドライブなどいわゆる「16bit」ハードの特徴を色濃く受け継いでおり、その中でも当時のJRPG(日本製RPG)に近い。

とりわけ1995年に発売された『クロノトリガー』の影響は少なくない。後述する戦闘システムのほか、本作のサウンドトラックに光田康典氏がクレジットされていることからもその影響が伺える。


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■現代の技術との絶妙な融合

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絵柄はバタ臭くなく、可愛らしいキャラクターも多く登場する。

往年のJRPGのオマージュが散りばめられているといっても、本作はファンのノスタルジーに訴えかけるだけのデッドコピーであったり、それっぽい要素をかき集めたツギハギになることを巧みに回避している。

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ボスの攻撃は苛烈で、気を抜くと戦闘不能になることも…。

例えば美麗なドット絵一つとっても、街灯の光源処理であったり、岸壁に打ち付けられる波にはパーティクル処理が用いられるなど、現代のゲームならでは細かい表現が光る。

ボスバトルでは迫力満点の巨大ボスが画面内を所狭しと暴れまわり、当時のゲーム機のスペックでは再現できなかった演出も可能となっている。

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自分たちの攻撃だけでなく、敵の攻撃もボタンでブロックできる。

本作の戦闘システムは既に多くのレビューでも言及されているようにクロノトリガーに似たシンボルエンカウント制となっており、マップ移動から戦闘へとシームレスに移行する。

さらに、「クロノ」のような範囲技のほかに、攻撃がヒットするタイミングでボタンを押すと威力が強化されるといった、『スーパーマリオRPG』のようなボタンアクションもある。

これらの要素はただ懐かしいだけではなく、システムに限らず音楽やアート、UIなど全てが高水準でまとまっている。まさに16ビットハード時代からの正当後継と呼べる仕上がりだ。


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■「レトロ」を無理強いしない

本作は古のJRPGよろしく、ガッツリとストーリーベースで進行していくため、最初からどこへでも行けるオープンワールドのゲームと慣れていると、やや一本道に感じるかもしれない。

しかしストーリー進行のテンポは極めてよく、多くのSFCタイトルがそうであったように会話はテキストであり、プリレンダのムービーを何十分と見る必要はない。

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マップの種類も多種多様で、スプライトが贅沢に使用されている。

多くのダンジョンは迷うの余地のない構造をしていながら、すこし道を逸れたところには必ず宝箱や食材などが配置されており、このあたりも「わかっている」人間が作っていると感じさせる。

また、プレイヤーを無理やりに「レトロ」に付き合わせるのではなく、ゲームプレイを楽にするさまざまなお助けアイテムが用意されているところも親切設計だ。

これらはオートブロックの発動率を上げたり、シンプルに体力を増加させたりと様々な効果を持つ。入手後はオンオフをいつでも切り替えられるので、難しいと感じたらオンにするなど、難易度を自分好みに調整しよう。

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難易度に関しては心配無用。自分に合った細かいカスタマイズが可能。

筆者の場合、序盤は戦闘後自動回復をオンにするとサクサクとストーリーを進めることができて快適だった。しかし、回復手段の料理が充実してきてからはオフにすることで、食材集めをより楽しく感じることができた。

やりごたえを求める人はオフ、とにかく先に進めたい人はオン、というだけでなく、自分の苦手な部分だけを補完できるところも、かゆいところに手が届く配慮だった。


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■不穏な予感バリバリの冒頭10分

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本作のシナリオについて多くは語れないが、主人公たちは「至点(Solstice)の子」という選ばれた戦士のような扱いを受けており、生まれ育った村で10年の修行の後、宿命に従って得体の知れないヤバイ化け物を倒す旅に半ば強引に送り出される。

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意味深な会話が多い。果たして真実が明かされる時は来るのか…。

旅立つ前のプロローグでは何一つ詳しい説明をしない長老ポジションの学院長や、主人公たちに助言しようとして学院長に遮られる先輩戦士など、この先の冒険がシンプルではないことを示す布石が早くもばら撒かれている。

よく練られたシナリオに加え、どのキャラクターにも独自の魅力があるため、筆者はレビューまでに6時間ほどノンストップで遊んでしまった。

ただ一点だけ、これから遊ぶ人にあえておせっかいを言うならば、冒頭の子供時代のストーリーにある取り返しのつかなそうなシーンがあるが、それは杞憂に終わるので大丈夫である。

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ここで一度心が折れかけたが、大丈夫だと過去の自分に伝えてあげたい。

「オレ、かわいそうな話はダメなんだよね…」という人はそこでやめずにもう少しだけ続けてみてほしい。キャラクターのことがますます好きになっていることだろう。お料理戦士最高!

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