歴史的名画をオフィスに設置し来客者を楽しませる… このケース、著作権は大丈夫?
【鈴木貴博『得する経済学』】今週は豪華な絵画を著作権フリーで会社の応接室に飾ったエピソードです。
「なかなか素晴らしい装飾品ですなぁ」
ずいぶん以前の話ですが、わたしの会社の応接室にはある仕掛けがあって、来客をお通しする際には世界的な名画が壁に飾られていました。
たとえばレオナルド・ダヴィンチの『最後の晩餐』はたぶん一番長い期間、会議室に飾ってあったと思います。ただ額に入れていたのではありません。55インチの大型液晶テレビに静止画を写しっぱなしにしていたのです。
■大画面テレビに映すと意外ときれいな装飾に
まだハイビジョンの黎明期だった1990年頃の話ですが、ハイビジョンを使った展示会に関わったことがあります。いくつかのシリーズがあったのですが、たとえば写真家の篠山紀信さんの写真展を写真パネルではなくハイビジョンで掲示したのです。
当時はまだデジカメがない時代で、ハイビジョンもブラウン管の時代です。このイベントが面白かったのはハイビジョンの画素数になって初めて、写真の展示に足る解像度になったことがひとつ。そしてもうひとつは当時のひとたちが初めて気づいたことが、ハイビジョンで展示すると映り込みが少なく、しかも自ら発光するので写真が印画紙とは違った鮮やかさに見えるということです。
そんな経験から私は、大画面テレビが登場した当初からテレビを見ていないときには静止画を写して、それをインテリアとして利用していました。ただ会社の応接室でこれをやるときにひとつ気を付けるべきことがあります。それが著作権です。
関連記事:転売禁止と書いてある「株主優待券」 売買が黙認されている経済の裏事情とは?
■現代美術はアウトでもルネッサンス絵画はセーフ
たとえば世界的なイラストレーター・村上隆さんが描いた絵画作品の公式画像をネットで見つけたとします。仮に画像をダウンロードしたとして、個人のスマホの待ち受けにするのは実は著作権法上問題ありません。個人の私的利用は許されているのです。
しかし、それを商用に用いたら法律上アウトです。冒頭の話ではわたしの会社で、わたしのビジネス上の顧客を饗応する応接施設に、ネットからダウンロードした絵画の画像を飾る話をしているので、たとえそれが個人事務所だったとしても私的利用にはあたらず、法律的にはアウトです。
ですが、ここでもうひとつ。著作権法には期限切れルールがあります。このルール、現在では著作者の死亡後70年です。だから事務所の大型ディスプレイに飾る場合、アンディ・ウォーホールはアウトですが、レオナルド・ダヴィンチなら著作権には触れないのです。
関連記事:遅刻したら無効になってしまう切符 なぜそれを買ったほうが得になるのか?
■あのイタリアンも同じ工夫をしているのです
ちなみにこの著作権フリーのルール、ビジネスではさまざまなところで使われています。よくあるパターンは自由の女神の彫像をお店の前に飾るパターン。作者のバルトルディが亡くなってから約120年経ちますから誰が使っても著作権は発生しません。
みなさんがよく行かれる「おいしいイタリアンが激安で食べられるファミレス」がありますよね。あの店内の壁には、イタリアのルネッサンスをイメージした壁画がたくさん描かれています。荘厳な雰囲気と、まるでイタリアに旅行したような旅気分が両方感じられるとても考え抜かれた内装だと思います。
そしてその内装ですが、著作権に関していえばおそらく「無料」。あのお店はこんなところまでコストダウンを工夫しているのですね。
関連記事:リサイクルショップで500円で売られていた絵が有名作と判明 3000万円超えの価値か
■著者プロフィール
Sirabeeでは、戦略コンサルタントの鈴木貴博(すずきたかひろ)さんの連載コラム【得する経済学】を公開しています。街角で見かけるお得な商品が「なぜお得なのか?」を毎回経済理論で解説する連載です。
今週は「豪華な絵画を著作権フリーで飾ったエピソード」をテーマにお届けしました。
・合わせて読みたい→リサイクルショップで500円で売られていた絵が有名作と判明 3000万円超えの価値か
(文/鈴木貴博)