小1息子の算数プリント、大人も解けない難問にネット民ドン引き 「悪問すぎる」と怒りの声も…

小学1年生の我が子が学校で解いた算数のプリントが「悪問すぎる」と物議。算数のプロも「答えは複数あるのでは」と疑問を呈している。

2024/11/05 04:45



■数学のプロも「初めて見た」と驚き

ポスト投稿主・青かんぱちさんは、今回の問題の詳細について「学校の授業で解いたプリントの問題になります。(授業中に)『5つずつ並べないといけない』といった説明は聞いていないとのことでした。いつも満点の息子が言うので、間違いないと思います」と、説明していた。

ちなみに、プリントの単元名は「10より おおきい かず」となっている。

算数のプリント

続いては、小学生から高校生までを指導する総合進学塾「あすなろ学院」の小学算数、中学数学、高校数学の教科責任者・森山昇平氏に、こちらの問題を見てもらう。

やはり、数学指導のプロから見てもこちらの問題はかなり異質に映ったようで、森山氏は「今件のような問題は、私は初めて拝見しました。当塾では『株式会社文理』の教材を採用しておりますが、採用している小学1年生用の算数の教材にも、今件のような問題はございませんでした」と、語っていた。

では、数学のプロから見て、この問題の「ねらい」は、どのように感じられるのだろうか。

こちらの疑問に対し、森山氏は「サビタイジング(subitizing)」と呼ばれる『いくつあるかが見てすぐにわかる』知覚過程、が背景として一部関係しているのではないか、と考えます」と、分析する。

こちらの領域について、専門家の先行研究によると、5歳児では3~4個、成人では4~6個の個数が「いくつあるかが見てすぐにわかる」事象であるとも報告されているそうだ。

こうした前提を踏まえ、森山氏は「6~7歳の小学1年生を対象とするなら、先行研究に倣えばサビタイジングの個数は4個程度と推測されます。そういう背景の中で『多いおはじきの個数を正確に数えるにはどの数え方が最も有効か』というトピックを小学1年生に考えてもらう、というのがねらいなのではないか…と推察します」と、私見を語ってくれた。


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■「3つのどれを選んでも良いのでは」

森山氏は選択肢の4つのうち、「のりこ」「ゆり」「こう」の3つについて、「並べ方の工夫に数学的な意図・思想を感じるため、どれを選んでも良いと思います」とも口にしている。

「ゆり」を正解とする根拠については、「5個のまとまりが3つと、1個のまとまりが1つある」のが一目で分かりやすい、というのが本問の主張でしょう。確かに、先述したサビタイジングのことを考慮すれば、これが最も分かりやすいおはじきの配置だと考えるのも一理あると考えます」と分析。

また、小学校の学習教材「算数セット」に同梱されているブロックのセットには「5個のまとまり」や「10個のまとまり」を作れる道具も含まれているため、「5個のまとまり」によって数えることに馴染みがある小学1年生も、少なくないと考えられる。

算数のプリント

しかし、「にー、しー、ろー、やー」という数え方が存在したり、一般的に「十進法」が使用されている点を考慮すると、やはり「のりこ」と「こう」の並べ方も、十分に「分かりやすい」と言えるだろう。

その上で、選択肢の1つのみを「正解」と定めた今回の問題は、やはり「悪問」と読んで差し支えない印象を受ける。

問題を見た際の感想について、森山氏は「率直に申し上げて、小学校1年生のどのような能力を測るための設問なのか、当初は分かりかねました」と、驚きを隠さない。

続けて「ゆりさんの並べ方が最も分かりやすい」という結論ありきの出題となっており、その考えに基づいて正誤判定されてしまう点は大いに疑問です」と率直な意見を寄せてくれた。

「サビタイジング」を考慮した出題の可能性は大いにあり得るが、いくつあるかが「見てすぐにわかる」という表現は、やはり問題文として相応しくないだろう。

森山氏も「感覚は人によって千差万別でしょうから、やはり多種多様な回答が考えられる設問なのではないでしょうか」と、口にしていた。

理不尽な指導や教育によって、児童たちがその教科への関心を失ってしまっては本末転倒。そうした「悪問」が無くなることを願いたい。


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■執筆者プロフィール

秋山はじめ:1989年生まれ。『Sirabee』編集部取材担当サブデスク。

新卒入社した三菱電機グループのIT企業で営業職を経験の後、ブラックすぎる編集プロダクションに入社。生と死の狭間で唯一無二のライティングスキルを会得し、退職後は未払い残業代に利息を乗せて回収に成功。以降はSirabee編集部にて、その企画力・機動力を活かして邁進中。

X(旧・ツイッター)を中心にSNSでバズった投稿に関する深掘り取材記事を、年間400件以上担当。ドン・キホーテ、ハードオフに対する造詣が深く、地元・埼玉(浦和)や、蒲田などのローカルネタにも精通。

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(取材・文/Sirabee 編集部・秋山 はじめ

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