『おそ松さん』の第一話が幻になったのは知的財産権のせい?
はじめまして。レイ法律事務所の弁護士の松田有加と申します。
今回から、法律コラムを書いていきたいと思います。小難しい法律の解説ではなく、日常に転がっているおもしろい「法律ネタ」を紹介できたらいいなと思っていますので、よろしくお願いしますね。
さて、最初のネタは「知的財産権」について。何やら難しい言葉ですね。アンケートサイト「マインドソナー」で聞いてみましょう。
■「知的財産権」ってなんのことか分かる?
やっぱり、何のことだかいまいち分からないという方が多いですよね。現在、「TPP」の影響もあり、知的財産権という言葉をよく耳にしますが、身近に感じていない方は多いと思います。
そこで、今回は、知的財産権のひとつである著作権について、アニメを例にしてみましょう。
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■『おそ松さん』第一話が幻になったのは知的財産権のせい?
国民的アニメ『おそ松くん』が最近『おそ松さん』として復活しましたね。藤田陽一監督らしい攻めの要素満載でファンにはたまらない内容になっています。
読者のみなさんの中にも、アニメ『おそ松さん』の記念すべき第一話を見たという人が多いのではないでしょうか。しかし、その第一話は、どうやら大人の事情でDVD化しなかったようです…。
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■パロディ満載の伝説回
第一話では、「私立おそ松学園」が舞台だったのですが、なぜか途中から(むしろ最初から?)カオス化し、有名アニメ『進撃の巨人』、『黒子のバスケ』、『ラブライブ!』などのキャラをモチーフにしたおそ松さんが登場しました。
ここで問題になったのは、過激なパロディです。じつは、パロディは著作権法に違反する可能性があるのです。
たとえば、キャラのビジュアルを丸パクリした場合には、著作権者がOKしない限り、著作権侵害の可能性が高いです。場合によっては、著作者からDVDの販売をやめてほしいと請求されることもあります。
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■キャラクターは著作権では保護されない!?
しかし、じつは著作権法は、アイデアを保護する法律ではないので、抽象的な人物像としてのキャラクター自体は保護されていません。著作権はキャラクターを漫画やアニメにおいて表現した「具体的な図柄」を保護しているに過ぎないのです。
そのため、あるキャラをモチーフにしている程度なら著作権侵害とされない場合もあります。
『おそ松さん』第一話も、キャラを丸パクリしているわけではなく、モチーフにしている程度でしたから、著作権侵害とされない可能性もあります。
とはいえ、実際にDVD販売までしてそれによって収益を挙げてしまうと、各方面から事実上バッシングを受けることになりかねないので、難しいところです。
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■世界にはパロディを認める国も
自分の作ったマンガなどが勝手に脚色されたり改変されたりしないように、著作者の権利を守っている著作権法。しかし、たとえばフランスなど、海外では広くパロディを認めている国もあります。
著作物に対する厳しすぎる制約は、かえって新しい創作活動をしづらくし、マンガ大国日本の多様な創作活動に影響を与える可能性も指摘されていますし、今後も議論が必要でしょうね。
個人的には、おそ松さん第一話をDVDで見たかったです…。
(文/弁護士・松田有加)