ビールも飲めない…被災地・熊本でも「不謹慎狩り」におびえる人が
熊本地震が発生して以降、ネット上で「不謹慎狩り」という言葉が流行している。これは著名人などが震災に関してなんらかの発言をした際に「不謹慎ではないか?」と一部の人々が過剰な反応をすること。
支援を表明すると「偽善では?」「アピールのつもり?」と言われる反面、まったく関係のないツイートをしても「今、そんなタイミングですか?」とされる…。理不尽と思われるものも少なくないため、議論の的になっている。
「不謹慎狩り」を行う弱市民は被災者支援の為に何かしてるんですかねえ。資金の寄付が批判の的なら何をしているんですかねえ。
— 紙飛行機侍🎃 (@s_flightman) April 21, 2016
https://twitter.com/simesaba1052/status/723024230690881536
■現地の人の痛切な叫びも
もっとも、これらはあくまでネット上での問題であり、現地熊本とは関係がない、という見方があった。
しかし、実際は熊本市内に住む人も、さまざまな自粛を強制される雰囲気に困っているらしい。以下、情報提供者である兵庫県に住む男性H氏と、彼に悲痛な声を寄せた熊本市の女性とのやり取りである。
突然の「ビールを送ってほしい」というメッセージ。H氏が思わず「不謹慎やな」とつぶやくと、「ビールなんか買いに行ったら、こっち(熊本)の人に「不謹慎」って言われて噂が立つけん…」とこぼす女性。
また、配達サービスも地元の人が携わるため、利用できないとのこと。
女性としては、以前から自宅の耐震化や保存食の備蓄など、前もって対応していたところがあるだけに、言いたいことはいろいろあるらしい。
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■「不謹慎狩り」の奥にある本質的な問題とは?
現地でも確認された「不謹慎狩り」に等しい行動自粛への圧力。ネット上の「狩り」と併せて考えると、孕んだ問題の大きさが見えてくる。
問題を大きくしたのは、おそらく日本人の中に根付いた「喪に服す」という精神ではないだろうか。近親者が亡くなった際、お祭りや新年のお祝い、遠方への旅行などを避けるべきとするこの考え方は、神道の「穢れ思想」に由来している。
長い時間をかけて、我々の心に染みこんだ日本独自の考え方なのだ。
しかし、ネットが発達した現代、個人の手が届く範囲は格段に広がった。それに比例するかのように、「喪に服す」範囲も広がっているのかもしれない。
本来は誇るべき精神性が、逆に当人たちを苦しめているというのは、なんとも皮肉な話である。
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(取材・文/しらべぇ編集部・クレソン佐藤)