「自衛隊が被災者の食料を奪っている」と知識人がツイートし、大炎上
日本の一般市民は、それに対して感謝と感心の念を抱いているようだ。だが一部の知識人の中には、なぜかそういう世論と対立するようなことをSNSで発信している者もいる。
たとえば先日は、「2万人の自衛官が被災者2000人分の食料を奪っている」とツイートした知識人がいた。これは「自衛隊は自分たちが消費する食料はどうしているのか?」という疑問から発生したとみられる書き込みだが、当然大炎上してしまった。
■自分の食事は自分たちで
この知識人のツイートに対し、漫画家の江川達也氏がFacebookで反論している。全文は非常に文字数が多いのだが、要約すれば「自衛隊は自己完結を前提にしている」という内容だ。
「自己完結」とは何か? すなわち「自分の生活インフラは自分で用意する」ということだ。
この辺りも江川氏の書き込みからの引用になるが、近代以降の軍隊は師団制を採用している。それは食料を行く先々で現地調達するのではなく、どうにか自前で賄おうとするシステムだ。
そうしなければ略奪が発生してしまう。
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■メッケル少佐と近代軍制
日本の場合は明治時代プロイセン陸軍から教官を呼び、師団制と参謀本部のシステムを採用している。司馬遼太郎の著作『坂の上の雲』にも登場したプロイセン陸軍のメッケル少佐は、そうした近代軍制を日本に輸出した人物である。
19世紀は、「軍隊」と呼ばれる組織が大きく変化した時代でもある。日本はかろうじてその潮流にしがみつくことができた。だがそれができなかった国は列強諸国の軍事力に圧倒され、植民地と化していった。
もっとも、第二次世界大戦時の旧日本軍は師団も参謀本部も機能しなくなり、兵が次々に餓死したということがあった。だがその反省を踏まえた自衛隊は、任務先で物資を直接調達しようということはまずやらない。
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■陸上自衛隊の「キャンプ」とは
陸上自衛隊の本拠地は、通常「駐屯地」と呼ばれる。これは英語に訳すと「キャンプ」だ。
これは世界の陸軍の共通項で、師団は「動く」ということを前提にしている。だから「ベース」ではなく「キャンプ」なのだ。
そしてそうである以上、平時はともかく有事の際はすべてのインフラを自家供給しなければならない。自分たちの食料がないのは言語道断で、もしそうなれば閣僚の責任問題になるだろう。
以上の理由で、「2万人の自衛官が被災者2000人分の食料を奪っている」という言説はただの思いつき発言だったということが明らかになる。