理研が「アトピー改善効果発表」も患者からは落胆の声

2016/04/27 07:00


aniaostudio/iStock/Thinkstock
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26日、理化学研究所(理研)はマウスを使用した実験を通じ、アトピー性皮膚炎の発症の原因となる遺伝子を突き止め、予防法も発見したと発表した。



■発見内容を簡単に説明すると…

乳幼児を中心に、国内で40~50万人程度の患者がいるとされる当疾患。昨今では「大人のアトピー」なる言葉もあるように、もはや国民病と言ってもいい広まりようだ。

今回の、理研の発表内容を箇条書きすると、以下のとおり。

・3000匹のマウスを観察した結果、どんな生育環境でもアトピーを自然発症してしまう個体がいることを発見
・上記のマウスの遺伝子配列を調べた結果、「JAK1」と呼ばれる遺伝子配列に突然変異が生じていた
・古い皮膚が剥がれる時に、水分を保つ「皮膚のバリア機能」が破壊されていた
・アトピー発症の4週間前からワセリンを塗ったところ、2カ月以上にわたって発症を予防
・人間で調査した結果、アトピー患者6人のうち4人が「JAK1」が活性化していた


簡単にまとめると、「JAK1」という遺伝子配列が異常に活性化してしまうことで、アトピーが発症する、ということ。マウスに使用された「JAK1」の活動を防ぐ阻害剤や、ワセリンが治癒に効果的なようだ。


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■アトピー患者に意見を聞いてみた

今回の発見について、患者たちはどう思っているのだろうか?

 「正直、ワセリンって聞いても正直驚きはありません。皮膚のバリア機能がダメなのはみんなわかってて、そのために実際ワセリンを毎日マメに塗っています。


アトピー患者はその多くが乾燥肌でもあるので、ワセリンで水分、油分が逃げないようにしないといけないんですよ。それに、ワセリンを使っても二か月間発症を予防? なんですよね。それって結局発症するってことじゃないですか。


アトピー治療には、いろんな形で振り回されてきた僕としては、今回くらいの発表じゃ喜べませんね」(20代・男性)


一方、肯定的な意見も聞かれた。

「アトピーを引き起こす原因が皮膚組織の側にあって、免疫系にはないことがわかったのは、患者としては朗報なのかなと思います。


だって、免疫系の側だと薬を服用する形になるんでしょ? それより、塗り薬で済みそうなのがいいですね。


でも、ワセリンの有効性については以前から指摘されてきたことだし、根本的な解決からはまだまだ遠いかなと感じます。もっとダイレクトに効く、ステロイド以外の薬ができるのはもっと先、私がおばちゃんになってからになりそうですね」(20代・女性)


アトピーを病院で長年治療している彼らにとって、ワセリンが効くことはあくまでも当たり前のことの様子。むしろ、原因の解明がまだまだ遠いと感じたのか、落胆を見せる人も確認できた。

研究が今後、どのように進んでいくのか、新たなる発表が待たれる。

(取材・文/しらべぇ編集部・クレソン佐藤

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