アイドル刺傷事件 元アイドルが実体験から語るファンとの危うさ
昨日夕方、東京都小金井市でアイドル活動をする女子大生が、出演予定のイベント会場入り口でファンの男に刃物で刺された。被害者の冨田真由さんは首や胸など20ヶ所以上を刺され、今も意識不明の重体と報じられている。
冨田さんは「ブログやTwitterで執拗な書き込みをされている」とストーカーの存在を警察に相談していたと報じられているが、こうした事件を未然に防ぐことはできなかったのだろうか?
そこで、過去にアイドルグループSDN48に在籍していた記者が、その視点と実体験からライブや握手会などでの「ファンとアイドルとの関係性」についてお伝えしよう。
■アイドルとファンの距離感は難しい
アイドルの仕事は大きくふたつに分けられる。
①ライブなど「パフォーマンス」の仕事
②握手会など「コミュニケーション」の仕事
ライブのあとそのままファンと握手会やハイタッチを行なうセット形式の公演も多い。本番中は客席から応援してくれていたファンと、数分後に向き合いコミュニケーションをとる際に「距離の取り方」が難しいのも事実だ。
「剥がし」と呼ばれるスタッフが警備に付き、一定の時間が過ぎるとファンを出口へ誘導してくれることも多いが、中にはギリギリまで「連絡先を聞き出そうとしてくる人」や「リアルな交際を迫ってくる人」もいた。
気心の知れている親しいファンから「結婚しようよ!」と言われれば愛の溢れるユーモアとして受け取り笑顔で返すこともできるが、アイドルという存在を超えた要求を迫られれば対応に困ることも少なくない。
■「手紙やプレゼント 」からエスカレート
ファンからの手紙や贈り物については運営側の方針によって対応が異なる。
記者が在籍していたグループでは事前トラブルを防ぐため、ファンの住所が記載されている封筒などはスタッフが検閲し「黒塗り」されてからアイドルへ行き渡るシステムだった。
また、AKB劇場では基本的には定価が1万円以上の物は、受け取ることができないことになっていた。今回の事件では、容疑者の男が冨田さんに多くのプレゼントを送りつけていたとも報じられている。
どのようなトラブルがあったかは不明だが、一方的にプレゼントなどを送るうち、次第に身勝手に見返りを求め行動がエスカレートしていった可能性もある。
■現場でのセキュリティ状況
記者のグループは現場へ出入りする際にロケバスで移動することも多かったが、その際に不審な車に追跡された経験が幾度かある。
スタジオやライブ会場にひとりだけで直接入るときも、「出待ち」のファンがサインなどを求めてくることがあった。
こちらが対応し目的が済むと、御礼を言いその場から離れてくれたが、まれにいつまでも会話を要求してきたり、現場から帰るまで待ち伏せされて恐怖を覚えたことも。
アイドルを応援している多くのファンは、推しているアイドルの大成を心から願い、共に芸能界を闘い抜きたいという愛に満ちあふれている。
一方で、一部のファンの行為によりアイドルたち自身「どこまで対応したら良いか」不安を煽っているのが現状だ。
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(取材・文/しらべぇ編集部・大木亜希子)