ビットコインが法的にも「貨幣」に 法改正を待ち望んだ大手企業
『ビットコイン』という存在が世間を騒然とさせた事件からしばらく経つが、遅ればせながらそのビットコインが最近ようやく法律で定義づけられた。
5月25日に改正資金決済法が成立し、これによりビットコインは「貨幣に準ずるもの」と見なされ、取引所は金融庁の管理下に置かれる。
このニュースは伊勢志摩サミットの影に隠れてしまった感があるが、もしかしたら日本発のベンチャービジネスを育てるかもしれない重要なテーマだ。
■かつての騒動をおさらい
2年前のマウントゴックス騒動は、日本人の「ビットコイン不信」を決定づける大きなきっかけだった。
フランス人起業家マルク・カルプレスが東京都に設立したビットコイン取引所マウントゴックスは、一時は世界最大の取引量を担うまでになっていた。だが同取引所が顧客から預かっていた資産が、いつの間にか消失してしまった。
そしてここからカルプレスによる横領が発覚し、「仮想通貨は信用できるのか?」という議論がますます活発になった。マウントゴックス破綻の際、麻生太郎財務大臣はマスコミの前でこう発言している。
「(マウントゴックス問題は)財務省の所管か? 金融庁の所管か? 消費者庁の所管か? 犯罪としては警察庁の所管か? よくわかんねぇんだよ」
独特のべらんめぇ口調がどうしても耳に入りやすいが、それを省けば麻生大臣の言葉は的を射ている。
■横領が分からなかった仕組み
この当時、ビットコインはまだ法規制されていない。それはすなわち「実態がない」ということだ。貨幣なのか物品なのか、法的定義がないから捜査のしようがない。だから取引所が破綻しても、顧客には国による預金保護が一切ない。
また本来、金融機関は金融庁からの監査に応じる義務がある。もちろんこれは不正防止のためだ。もし頭取が顧客の預金を横領していたら、金融庁による捜査の手が入る。
マウントゴックスがそれを免れていたということは、経営者による不正を防止できないという意味に等しい。だからこそ、じつは大手企業はビットコイン決済の導入に慎重だった。規模の大きい会社ほど、「システムの信頼性」を求める。
ところが今年3月に資金決済法の改正が閣議決定されてから、導入に乗り出す企業が次々と現れた。
■法規制とビジネスチャンス
こうしたことは、ビットコインだけではなく、たとえばドローンでも同じ現象が起きている。
「空の産業革命」と言われるドローンだが、法的定義がなかった頃には墜落事故や重要施設への侵入が相次いだ。イベント関係者などからも「ドローンを規制してくれ」という声が相次ぎ、政府は急き立てられるように航空法を改正した。
結果、ドローン市場は萎縮するどころかますます盛況になった。「法規制がビジネスの可能性を小さくする」という発想は、改めなければならないようだ。改正資金決済法により、ビットコインは「本当のスタート」を切ったといっても過言ではない。
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(取材・文/しらべぇ編集部・澤田真一)