防虫用品市場で日系企業躍進 「ワンプッシュ」が大人気
人類にとって最も危険な生物、それは「蚊」。
蚊はあらゆる病気の媒体となり、しかも小さな水たまりがあれば大繁殖してしまう。特に熱帯の国では、「いかに蚊を駆除するか」が国政でもたびたび議論されている。
したがって、防虫市場は一般人がイメージしているよりも巨大で奥深いビジネス分野なのだ。
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■インドネシアとフマキラー
防虫製品を取り扱う日系企業は、ASEAN諸国への進出に力を入れている。
たとえば、フマキラーがインドネシアで大成功を収めている話は有名だ。今や同国のスーパーマーケットやコンビニへ行けば、ほぼ間違いなくフマキラーのVAPEブランド製品を見かけることができる。
ASEAN諸国の蚊は防虫剤耐性があるらしく、日本の製品をそのまま持ってきても効果がない。現地で販売されている商品は、どれも現地で開発されたものだ。
それはインドネシア政府としても、非常に喜ばしい。「商品が輸入品ではない」ということは、自国内に生産工場が建つという意味。大きな雇用を創出することができ、国内経済の活性化につながる。
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■現地に浸透したワンプッシュ
インドネシアの防虫用品は、日本のそれとは形式もかなり異なる。
日本では電気蚊取り器の主流は液体カートリッジ式だが、インドネシアのそれは今もマット式。日本人から見ると昔懐かしい形式の製品が、現地の店頭に並べられている。
また、同国では「ワンプッシュ薬剤」も広く使われている。1回の噴射で室内の蚊を半日は抑制できるというスプレー缶。これは日本でも、一時期話題になった。
だが日本人の場合は「こんなに効き目があるのだから、もしかしたら人体に有毒なのでは?」と考えてしまいがちで、そのため従来の製品を圧倒するに至っていない。一方でインドネシアではその強力さが市場に受け入れられ、防虫の定番商品に昇格した。
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■営業努力の賜物
インドネシア市民は、まとめ買いよりも1個買いを好む人々でもある。
乳児用紙おむつにしても、20枚1パックという単位ではなく必要に応じて1枚ずつ買っていく。蚊取り線香も同じで、個人商店での取り扱いはバラ売りが中心。
文字で書くと非常に簡単だが、日系企業の営業社員にとっては途方もない労力を必要とする国でもある。実体経済の原動力が個人商店である以上、その1軒1軒に足を運ばなければならない。
そうした苦労が実り、インドネシアの防虫市場では日系企業が大きなシェアを確保しているのだ。
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(取材・文/しらべぇ編集部・澤田真一)