高校生も「陰謀」に加担?参院選は「不正選挙」だったのか
先日の参議院選挙は「不正選挙」だったという意見がある。
近年、こうした陰謀論はネット上でよく見かけるが、今回の場合は「三宅洋平氏が落選したのは意図的な操作だ」と、一部ネットユーザーの間で囁かれている。
それによると、本来は当選圏内に入っていた三宅氏の得票が、集計途中までまったくなかったそうだ。
三宅氏の票は、選挙管理委員会の職員の手により抜き取られ、開票所で処分されたという。だが、そうしたことが本当に実行できるのだろうか?
■一般人が投票所を運営
一口に「選管職員」といっても、その大半は臨時招集の一般市民である。投票所の運営は、一般市民の協力なしには進まない。
選管の臨時職員は、日本国籍保持者でその地域の住民票を持っている18歳以上ならば誰でも志願できる。最近では高校の授業の一環として、学生が投票事務の仕事に参加している。
つまり、一連の作業は市民の監視下で行われていて、特定の候補者の票を処分しようものなら間違いなく通報される。
しかも投票終了後の開票作業は見学可能である。「作業の内容を可視化する」というのも、選管の仕事のひとつだ。
もし本当に不正が行われているのなら、それはごく普通の一般市民や高校生までもが結託しているということだ。しかし、そうした陰謀に関わったという人の証言はしらべぇ編集部にはまだ届いていない。
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■ネット世界と現実世界
にもかかわらず、国政選挙が行われるたびに「あれは不正選挙だった」という声が絶えない。
これは、ネット世論と現実世論のズレが原因として考えられる。
三宅洋平氏はネット上では有名人だ。だが、世の情報をネットではなく紙媒体やテレビでチェックしている人々にとってはどうだろうか?
「ネットは使うがSNSは一切やらず、ニュースは新聞で読む」という人は多いはずだ。よく考えれば、三宅洋平という人物はSNSを利用している人たちだけの有名人である。ガラケーユーザーがまだまだ少なくない日本で、そうしたローカルスターが大きな得票を獲得するのは難しいのではないか。
三宅氏も言及しているが、都市部にしろ地方部にしろトップ当選するような候補者は何十年にも渡り地元で政治活動を行っている。「ネット上で人気があるからトップ当選するだろう」というのは、あまりに甘い観測である。
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■大事なのは「得票率」
だがそれでも、三宅氏は大健闘した。得票率4.1%、25万票を集めている。今回の落選という結果は、決して苦にならない数字ではないか。
「議会政治の本場」と言われているイギリスでは、政党所属の新人候補者は落選を前提に出馬する。保守党候補者は炭鉱町の選挙区へ、労働党候補者は金融街の選挙区へパラシュート降下させられる。
かつてサッチャー元首相と対立していた地域へ保守党候補者が出馬しても、まず勝ち目はない。だが問題は当選したか否かではなく、どれだけ得票率を集めることができたかである。結果的に落選しても、労働党候補者に迫る得票率を獲得すれば「将来有望」と見なされ、次の選挙は両党拮抗の激戦区で戦うことができる。
国政議員を目指すならば、そうした試練の積み重ねを経験しなければならない。それが「議会政治の本場」たる所以である。
根拠のない陰謀論を主張する支援者は、自覚があるかはさておき候補者の足を引っ張っているに過ぎないのだ。
(取材・文/しらべぇ編集部・澤田真一)