現役内科医が語る 身近に潜む「食物アレルギー」の可能性
しらべぇライターで現役内科医の青木マダガスカルです。
先進国に多く、わが国でも患者数が増加しているとされる食物アレルギー。花粉症と関連があるものも報告されています。あまり知られていない食物アレルギーについて解説していきたいと思います。
■自身や家族が食物アレルギーをもっているひとの割合は?
しらべぇ編集部では、自分や家族が食物アレルギーである人の割合を調査しました。全国20代〜60代の男女1,348人に聞いてみたところ、約1割程度の人が「ある」と答えたのです。
食物アレルギーの有病率は、乳児で約5~10 %、幼児で約5 %、それ以降では1.5~3%とされています。病院受診にいたっていない例があることや、家族も含めたことで、今回の調査では少し高めの結果となったのかもしれません。
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■いろいろな食物アレルギー
特定の食物を摂取後に、免疫学的なしくみによって蕁麻疹などがみられるのが典型的な食物アレルギー。さらに近年、定義が拡大され、皮膚接触、吸入、注射によるアレルギー反応も含まれるようになりました。
「食物の注射」はイメージしにくいかもしれませんが、たとえばインフルエンザワクチンは製造過程で卵を使用しており、卵抗原を含みます。
また実際は、蕁麻疹以外にも多彩な症状がみられます。頭痛、結膜充血、鼻汁・くしゃみ、口腔粘膜の腫れ、悪心・嘔吐、下痢、血圧低下など。
最近、食物アレルギーの特殊型として口腔アレルギー症候群が注目されています。
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■口腔アレルギー症候群 とは
口腔アレルギー症候群は、果物や生野菜を摂取したときに口の中の粘膜が腫れるもの。花粉症と合併することが多いとされています。
ある植物の花粉にアレルギーを持っていると、免疫学的に似た構造を持つ食物に対しても反応する場合がある、交差反応というもの。
記者はブタクサアレルギーなので、交差反応を示すとされるウリ科の果物(メロンやスイカ)を食べると、たしかに口の中がイガイガします。
スギはトマト、ヨモギはニンジンやマンゴーなどと交差反応性の報告がありますが、その地域に飛散する花粉の種類によっても変わるようです。
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■あの事件も食物アレルギー
5年ほどまえに世間をさわがせた「茶のしずく問題」は、石けん中に含まれる加水分解コムギ(グルパール19S)が原因の食物アレルギーです。
グルパール19Sによってアレルギーが起きる一歩手前の状態になり、食物として摂取する小麦に対してもアレルギー反応が起きるようになったと考えられています。
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■知ることが大事
アレルギー疾患は、誰でも発症する可能性があります。不可抗力的な部分が大きいとはいえ、予防・治療は、とにかく知ることから始まります。
花粉と果物・野菜の交差反応、石けん中の食物成分による事例など、ぜひ覚えておいてください。
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(文/しらべぇ編集部・青木マダガスカル)
【調査概要】 方法:インターネットリサーチ「Qzoo」
調査期間:2016年2月19日~2016年2月22日
対象:全国20代~60代の男女1,348名(有効回答数)