西島秀俊主演の「BIG」CMに隠された凄い仕掛け 10億当てた「ごとう」が意味するのは…
1月10日から全5篇が順々にオンエアされている「10億円BIG」(独立行政法人日本スポーツ振興センター)のテレビCMは、謎めいた世界観に包まれている。
五島(ごとう)という名の男性が高額当選くじBIGで10億円当たったと噂されており、五島と親交のある5人の人物が「五島が10億円当たったこと」についてそれぞれ“ひとり語り”するという内容のCMだ。
登場するのは、西島秀俊(五島との関係:同期)、松重豊(同:上司)、友近(同:スナックのママ)、二階堂ふみ(同:得意先受付)、菅田将暉(同:部下)という人気タレント5人。それぞれの関係性の設定のなかで、嫉妬したり不思議に思ったり証言したり、男として狙ったり憧れたり、五島への思いを語っている。
しかし、その“五島”なる人物は、CMに出てこないのだ。
■『桐島、部活やめるってよ』との共通点
登場人物みんなが同じ人物について語っているのに、肝心の語られている本人は出てこない。このストーリー構成をみて、2012年に公開され「第36回日本アカデミー賞」の最優秀作品賞を受賞した映画『桐島、部活やめるってよ』を思い浮かべる映画ファンは少なくないだろう。
朝井リョウによる2010年の同名小説を原作とするこの映画は、主要登場人物たちが「桐島」という学園のスターが突然部活をやめたことに衝撃を受け、それを機にそれぞれの高校生活が何らかの形で変化する模様を描いた作品だ。
登場人物たちは、劇中で幾度となく「桐島」という名前を口にし、桐島の存在に振り回され続けるものの、桐島本人はついに一度も出てこない。桐島“らしき”人物が遠目に現れるシーンはあるものの、観客が桐島の顔や声に出会うことはないのだ。
この構造は、まさに今回の「10億円BIG」CMシリーズと同じである。
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■「五島」という名前の“元ネタ”は?
公開時、映画ファンのあいだでカルトヒットした『桐島、部活やめるってよ』。雑誌やネットに掲載された同作の批評において、上述の「桐島が出てこないストーリー構成」について、元ネタとなる作品を挙げるものが多く見られた。
その元ネタとされた作品は、1952年に初出版された劇作家サミュエル・ベケットによる戯曲『ゴドーを待ちながら』(原題:En attendant Godot)だ。
2幕劇であるこの作品は、2人の浮浪者が「ゴドー」という人物を待ち続けるというストーリー。途中違う人物が現れたり、ゴドーからの伝言が告げられたりしながらストーリーは進んでいくが、2幕終了に至るまで、結局ゴドーなる人物は現れずに終わるのだ。
諸説あるものの、同作の解釈として「ゴドーは神(ゴッド)を意味している」とする説は有名であり、「桐島」もキリストと語感が似ていることから、『桐島、部活やめるってよ』の公開時、この2作を紐付けて語る批評が注目された。
そして、「10億円BIG」CMシリーズの“ゴドー的ポジション”の人物の名前は、五島(ゴトー)だ。CMの謎めいた世界観やストーリーからして、このネーミングは偶然ではないと考えるのが妥当なところだろう。おそらくは、『ゴドーを待ちながら』へのオマージュだと思われる。
30秒という短い世界にこれだけの仕掛けを含んだ今回のCMシリーズ。見事の一言だ。
※画像は、「Who is GOTO? 西島秀俊主演BIG CM公開中」のスクリーンショットです
(文/しらべぇ編集部)