【リオ五輪】花型競技・レスリングの基礎知識をおさらい
リオ五輪でのレスリング競技開始から、日本人レスラーの快進撃が始まった。
男子グレコローマン59kg級で、海外では「ニンジャレスラー」と呼ばれている大田忍選手が銀メダルを獲得。そのニックネームを証明するかのような動きで、世界の強豪から次々と白星を奪い続けたのだ。
日本にとって、レスリングは柔道と同じくメダルが見込める格闘競技である。レスリングを観なければ、オリンピックを観たことにはならない。それほどの重要性を占める競技だ。
ここではレスリング観戦を楽しむための基礎知識を、簡潔に書きたい。
■グレコローマンとフリーの違い
アマチュアレスリングには2種類ある。グレコローマンスタイルとフリースタイルだ。
このふたつの違いは、下半身への攻撃が認められているか否かという点。グレコローマンの場合は手で足を掴んではいけない上、足払いをかけることも禁止されている。すると低姿勢からのタックルができない。
だが同時に、モーションの大きい投げ技が多くなるのがグレコローマンの醍醐味だ。そしてじつは、戦前まで「レスリング」といえば専らグレコローマンを指した。フリースタイルは戦後になって普及した種目である。
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■日本は強豪国
レスリングの強豪国といえば、アメリカとロシア、中央アジア諸国、モンゴル、そしてイラン。国際大会を見ても、これらの国の選手が非常に多い。
だがもちろん、その中で日本も存在感を発揮している。そもそも日本選手団は1952年のヘルシンキ五輪から今まで、ボイコットしたモスクワ五輪を除けばメダル獲得を絶やしたことが一度もない。日本にとって、柔道は「国技」で体操とレスリングは「お家芸」と言われている。
そしてオリンピックで活躍する日本人選手の所属先は、自衛隊か警察、警備会社がとくに目立つ。今回のオリンピックで銀メダルを獲得した太田忍選手も、綜合警備保障(ALSOK)所属のレスラーだ。この会社には、最近まで吉田沙保里選手も在籍していた。
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■レスリングなくして五輪なし
3年前、ある出来事が世界のマット界に衝撃を与えた。
国際オリンピック委員会(IOC)が、レスリングを中核競技から外すという決定を下したのだ。
これはレスリングのみならず、組技のある他種格闘技をも巻き込んだ一大騒動に発展。それに加え、当時対立していたアメリカとイランの両政府がIOCの決定に反発し、共同でレスリングイベントを開催するという行動に出た。イランの選手団に対し、アメリカがビザ発給を認めたのだ。
レスリングという競技は、険悪な二国間関係を修復させてしまった。それだけの強大な力を持っている、ということである。また、競技のルール改正や男女平等を促すための規定整備などが実を結び、レスリングは再びオリンピックの競技に指定された。
そう、レスリングなくしてオリンピックは成立しないのだ。
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(取材・文/しらべぇ編集部・澤田真一)