江戸城も蘇るか?全国各地で進む「天守閣再建計画」

2016/08/18 05:30


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「歴史研究」は、一生涯に渡り継続できる趣味である。

とくに戦国時代は、日本人にとっての「生涯学習」だ。この時代区分に起こった出来事は、世の理がすべて凝縮されている。追いつめられた時に人が取る行動、慢心の行方、敵と味方の見分け方、そして政治のあり方。

だからこそ、城郭史跡のある都市では天守閣再建計画が持ち上がっている。もちろんこれは巨額の費用を投じる一大プロジェクトだが、自治体も市民も乗り気のようだ。



■発掘中の駿府城

静岡県静岡市にある駿府城公園では、敷地の発掘調査が進められている。

これはかつてそこにあった天守台の構造や大きさなどを調べるためのもので、将来的には天守台と天守閣を再建する予定であるという。

発掘の様子は、出土史料とともに市民に無料公開。現場には来訪受付などもなく、時間内ならば誰でもそこに立ち入ることができる。

駿府城天守台は、明治時代に陸軍連隊を誘致する際に取り壊された。当時は軍が都市のインフラ整備を担っていたということもあり、静岡市の近代化のために陸軍の駐屯は必要不可欠だったのだ。だから天守台は急ピッチで解体され、事前にスケール調査を取ることもなかった。

従って、駿府城天守台は未だ謎に包まれたまま。現在進められている発掘は、それを解明する目的で行われている。


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■名古屋城が木造に

天守閣再建といえば、先ごろ名古屋城天守閣の木造再建が決まった。

今ある名古屋城天守閣は、戦後に建てられた鉄筋コンクリート製だ。ちなみにオリジナルは、戦時中のアメリカ軍による空襲により失われた。

名古屋城のような鉄筋コンクリート製天守閣は全国各地にあるが、これを「文化財」として認めるかの議論が歴史愛好家の中である。鉄筋コンクリートの建物は「史跡」や「文化財」ではなく「モニュメント」に過ぎない、という声が根強いのだ。

そういう人々の間では、名古屋城や大坂城よりも小さいが純然たる木造再現である掛川城(静岡県)のほうが、評価が高い。


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■江戸城再建なるか?

そしてじつは、東京都内でも江戸城再建計画があるのだ。

江戸城天守台は、今の皇居東御苑にある。そこに天守閣を再建するというのは一筋縄ではいかない事業だが、実際に『江戸城天守を再建する会』というNPO法人が存在。

この会は江戸城天守閣を鉄筋コンクリートではなく、木造の伝統工法で再建することが目標だ。じつのところ鉄筋コンクリート製建築は、耐用年数がせいぜい50年しかないことが明らかになっている。その一方で木造の伝統建築は、メンテナンスさえ怠らなければ数世紀に渡って建物として使用できるのだ。

そうした技術を伝承するという上でも、木造天守閣再建は「意義がある」と言われている。

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(取材・文/しらべぇ編集部・澤田真一

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