日本の神話や寓話の観点で語る民俗学的『君の名は。』
少年と少女の切ない恋愛をテーマにした作品で知られる新海誠監督の最新作『君の名は。』が大ヒット上映中だ。
早くも聖地巡礼にむかう人が続出するなど、美しい風景描写にも一目置かれている。
そんな『君の名は。』には恋愛や映像美だけでない要素が散りばめられている、と30代民俗学オタクの男性は熱く語る。
しらべぇ取材班は、「ネタバレ上等で語りたい」彼の話を聞いてみた。映画を観ていない人は注意してほしい。
■彼は誰時の概念
30代民俗学オタク:『君の名は。』のなかで、心に残るシーンのひとつが黄昏時です。授業のシーンでも言及がありました。
民俗学では、黄昏時は夕暮れや夜明けの、目のまえにいる人が誰なのかもわからなくなる時間帯を指す言葉です。この時間帯は誰そ彼時、彼は誰時(かはたれどき)、逢魔が時(おうまがとき)とも呼びます。
民俗学からすると、昼と夜の境目は神の世界と現世界の境界を曖昧にする要素だとされます。あの世とこの世を繋ぐ時刻に言い換えることもできます。
死んだはずの人が目のまえに現れてもおかしくない時間が「彼は誰時」なのです。理解しておくと、より楽しむことができるでしょう。
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■巫女と神と時間概念
30代民俗学オタク:ヒロインである三葉は巫女です。巫女は神事を通して神と一体化します。口噛み酒を造ったのは女神コノハナサクヤとも言われていますが、神の名はそこまで重要なファクターではありません。
むしろ神にとっての時間感覚と人間の時間感覚の違いが重要でしょう。浦島太郎で語られる水上異界では四季それぞれの部屋が出てきます。時間の概念が此岸と彼岸ではまったく違うのです。
そうした神と一体化した三葉だから、主人公の瀧との精神交換を起こすのでしょう。では、なぜ瀧が選ばれたのか。これは逆説的に将来結ばれる相手とは縁があるからではないでしょうか。
二人が精神交換をした時点では縁がなくとも将来には縁があるから、ゆえに縁はある。そういう神目線の論理で観るともっと楽しめるかもしれません。
恋愛要素だけではないとの評価も高い『君の名は。』は、ずいぶんと神仏習合的だが民俗学的目線からも語ることができるようだ。寓話的意味合いが強いところも影響しているのだろう。
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(取材・文/しらべぇ編集部・モトタキ)