配車アプリ『Uber』が日本でトレンドにならない理由
配車アプリ『Uber』の話題は、日本ではあまり聞かなくなった。
平たく言えば、日本での業績が伸び悩んでいるのだ。そもそも一般の乗用車をUberの営業車として活用する「ライドシェア」すら、日本では実現していない。せいぜい国土交通省や地方自治体による試験運用止まりだ。
だからUberは、既存タクシー企業と提携して緑ナンバーの車両を提供するに留まっている。最近、宅食事業への参入を表明したが、タクシー業務とは別なのでひとまず置いておこう。
なぜ、Uberは日本での苦戦を強いられているのか。
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■インドネシアでは大成功のUber
それを考察する前に、国外でUberがどのようなサービスを行っているのか見てみよう。
インドネシアは、去年から急激にスマートフォンが普及した国。EC事業の立ち上げも盛んになり、今では斬新なスマホアプリビジネスがいくつも花開いている。
そして首都ジャカルタでは、移動に車両は欠かせない。バイクタクシーの手配なども、今やスマホで行えるようになった。市内のどこにいても簡単に呼び出せる。
市民の間で、Uberは大人気だ。ボッタクリの心配がなく、既存タクシーの正規料金よりもはるかに安い。しかもジャカルタ市内のUberは3種類のラインナップを用意。バイクタクシーの『Uber Motol』、四輪車両の『Uber X』、そして高級ハイヤーの『Uber Black』だ。
Uber Xは、要はごく普通の自動車である。もちろん運輸省の営業許可のない「白タク」。だが、スマホのナビがあるためマイナーな場所にでも迷わず走ってくれる。インドネシアのタクシーは、未だカーナビが装備されていないのが普通なのだ。
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■各方面からの反発
しかし、インドネシアでもやはりUberは問題視された。
運輸省の許可を取っていないため、まず陸運組合がUber非難の声明を発表。ジャカルタ州知事やバンドゥン市長などの有力政治家もUberに難色を示した。
ジャカルタ州知事のバスキ・プルナマ氏は、「Uberがインドネシアに現地法人を置かない限りは営業を認めない」と公言。ただし、それが達成された現在は態度を軟化させている。
いずれにせよ、Uberの「正常運転」までには多くのハードルが存在した。その大半を飛び越えたとはいえ、まだまだUberへの反発の声が根強いのが現状だ。
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■日尼両国の違い
だがそれは、既存業界から問題視されるほどUberが市民の間で人気を博したということ。
アプリの使い勝手は、すこぶる評判が良い。また、このアプリは全世界共通なので、外国人にとっても非常に便利。
日本市場では苦しんでいるUberだが、国が違えば事情も違う。インドネシアでは、まさに絶好調だ。
では、両国の市場の違いは何か?
ひとことで言えば、タクシー会社の質の違いだろう。
日本のタクシーは「距離が近い」と乗車拒否をできない。「当然じゃないか」と返されそうだが、海外では目的地がある程度遠くないと断られる可能性が大きい。あるいはメーター料金ではなく、ドライバーの言い値を払うケースも。
だから日本を訪れた外国人観光客は、タクシーの規律とサービスに驚嘆する。
そんな国で、普通乗用車にすぎないUberのライドシェアが流行るかといえば、やはり難しい。低料金よりも安全性を重視する日本人の性格も、もちろん相成っている。
以上が、Uber苦戦の理由のひとつではないだろうか。
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(取材・文/しらべぇ編集部・澤田真一)