ひきこもり・非正規雇用に立ち向かうカフェ併設の就労支援施設「ハローライフ」とは?
「不安定な仕事から抜け出したい」「経験が無くて仕事の探し方からわからない」「ハローワークに行ったけど上手く行かなかった」。15~34歳の若年無業者およびフリーターが合計242万人 (※1) に達し、そんな悩みを抱える若者が多いという。この社会的な課題に“小洒落たカフェ”が立ち向かっている。今回は、小洒落たカフェが併設されたワークサポート施設「ハローライフ」を運営するNPO法人スマイルスタイル代表・塩山諒さんにお話を聞いた。
大阪の中心地「本町」エリアで雑貨店やカフェが立ち並ぶ一角に位置するハローライフ。1Fがカフェ「CHASHITSU for worker」。働くことに関する書籍がセレクトされており閲覧自由。上階は、お茶やお菓子の製造を行う就労支援スペース、イベントスペースとなっている。
しらべぇ編集部:
ハローライフを立ち上げたいきさつをお教えください。
塩山さん:
ひきこもり歴が長いなどで、行政のハローワークや民間企業の就職・派遣サービスだけでは、なかなか安定した就労に辿り着けない方がいます。そういった方の支援、そして行政や民間が出来ないことをスピード感を持って行う「現場」を持とうと、2013年にスタートさせました。
しらべぇ編集部:
具体的にどのような活動をされていますか?
塩山さん:
当初は就労を希望する方にマンツーマンでの企業とのマッチングサポート、たとえば履歴書の書き方などの技術支援や、仕事と人生設計の関わりなど意識面での支援を行ってきました。そして現在は、そういった1対1の「点」から、たとえばこのカフェで出すお茶やお菓子を製造するインターンシップの場を設けたり、よりインパクトの期待できる「面」でのチーム支援にシフトしつつあります。同時に、応募者が来ない悩みを抱える企業へのコンサルティングなども実施しています。
NPO法人スマイルスタイル代表・塩山諒さん
しらべぇ編集部:
意義があると同時に大変な活動だと思うのですが、なぜそのようなことをされているのでしょうか。
塩山さん:
私自身が10代のころ非正規雇用で厳しい現実に晒された経験から、いわゆる“競争に負けた”人に心あるサポートをする場が必要だと思ったんです。また、若年層が生活保護や福祉の恩恵を受けると、どうしてもその循環から抜け出しにくい現実があります。そちらに繋ぐのではなく、就労へうまく橋渡しをすることで、本人はもちろん、財政、応募者がない企業側の悩みも解消できるという3者にとって「コスパ」のよい仕組みを作っていけると考えています。
しらべぇ編集部:
活動を通じて、やりがいを感じるのはどんな時でしょうか。
塩山さん:
一つには絞りにくいですが、たとえば何年もひきこもっていた方が、インターンシップをしていくうちに顔色や表情がどんどん明るくなって行って、一般就労される時などやはり嬉しいです。そういった事例が行政を動かすインパクトにもなりますし。
しらべぇ編集部:
それはグッときますね。ところで、オーケストラとの就労支援コラボ(※2)などの企画や、このカフェ自体も2014年グッドデザイン賞を受賞するなど、一般的なNPO法人とは違う、斬新なアイデアやスタイリッシュさが特徴的に見えます。それらはどうやって生み出されるのでしょうか。
塩山さん:
相当な時間をかけて各問題を徹底的に調査しており、企業でいうマーケティングのフェーズにかなり力を入れています。そして、その解決手段としての企画だったり、伝える技術としてデザインを打ち出しているつもりです。そのため、NPOとしては珍しいことに、デザインを統括する担当と4名からなるクリエイティブチームを内部に編成しています。
仕事探しとなると時には悲壮感が漂う暗いイメージもあるが、ハローライフはそれが微塵もなく、誰でもリラックスして訪れることができる。行政とも民間企業とも異なる切り口での、若者の就労・貧困問題への挑戦。引き続きその活動に注目したい。
ハローライフ 大阪府大阪市西区靭本町1-16-14
http://hellolife.jp/
※1 内閣府 平成26年版「子ども・若者白書」
http://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/h26gaiyou/b1_04.html
※2 日本センチュリー交響楽団とのmusic project「The Work」
http://the-work.jp/
(文/しらべぇ編集部・伊東宏之)