「特撮ロストエイジ」アラサー世代に拡がる愛と友情の輪【出口博之のロック特撮】

2015/02/23 11:00


こんにちは、白ポロ+眼鏡でおなじみのMONOBRIGHT、ベースの出口です。

最近同年代の特撮好きミュージシャンやDJの方と知り合う機会が多く、おのおの好きな作品についてアレやコレやと語らせていただいております。その話題の中で、今の20代後半から30代前半の年代が感じる「特撮への満たされない飢え」があることに気づきました。

そこで今回は、アラサー世代が持つ特撮への渇望感」を考えてみたいと思います。



■今の20代後半から30代前半は「特撮ロストエイジ」

20代後半から30代前半は、生まれ年で言うと1980年代前後。この1980年代は、特撮界では大きな変化があります。

1968年に放映を開始したウルトラマンシリーズと、1971年に放映を開始した仮面ライダーシリーズの、継続して放映されるテレビシリーズが一旦終了してしまうのです。最前線で平和を守る特撮ヒーローが、相次いでテレビから姿を消してしまいました。

図1

こちらの図でも判る通り、70年代までは様々なヒーローが綺羅星のごとく登場していますし、90年代以降ではウルトラマンと仮面ライダーが(仮面ライダーは80年代に2年だけ放映されますが)テレビに戻ってきます。

また、ビデオやDVD等の映像ソフトの爆発的普及によって、過去のヒーローも同じ時代に見ることができるのです。もちろん80年代にもヒーローは多く登場しますが、それでも70・90年代に比べると視聴できるシリーズ数が少ないのです。

この事から、今の20代後半から30代前半を「特撮ロストエイジ=特撮を充分に見られなかった世代」と位置づけることができます。


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■とどまることを知らない特撮へのリビドー(欲求)

前述の年表を見ると、1980年代は特撮番組自体それなりに放映されていましたが、70年代に比べると番組自体が約半分になっています。昨今の様にご家庭で簡単に録画ができる環境ではなかったので、当時の特撮好きのちびっ子(今の特撮ロストエイジ)にとっては「見たい時に見られない」という状況にありました。

見たくても見られなかった特撮好きのちびっ子たちは、「全ページ覚えるまで古い特撮の図鑑や、幼年向け雑誌の特撮記事を読む」「主題歌のカセットテープをひたすら聴き込む」「模写しまくる」「オリジナルヒーローを考える」といった、自分の周りにあるもので何とか特撮への欲求を発散しようとします。

そして、各々得意なジャンルに没頭した特撮好きのちびっ子達は大人になり、今度はそれぞれの分野で次の作り手側に回り始めます。その原動力は、幼少期に見たい特撮を充分に見る事ができなかった経験と、それによって心の隙間に生まれた埋められない渇望感なのです。

その中で「読む」と「聴く」方向だった私が、現在、バンドだけでなく特撮DJやこういった書き物のお仕事に就けたのは偶然ではないと思います。

写真1

幼少期の特撮リビドー(欲求)を受け止めてくれた図鑑達。どこへ行くにも持っていたので、表紙が無くなってもページが外れても、その度に自分で補修して読んでいました。


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■特撮好きでよかった! 広がり続ける特撮好きの輪

ありがたいことに、私の周りにはこの渇望感を持つ特撮ロストエイジの方々が多くいます。初めてお会いした方とも「特撮好き仲間」という強い繫がりを感じるとすぐに打ち解けられます。その最たる場所が、私も出演させて頂いている特撮DJイベントだったりします。

クラブやライブハウス内に大音量で鳴り響く、特撮ロストエイジ達のテーマ曲と言っても過言ではない、1988年に放映された「仮面ライダーBLACK  RX」のオープニング曲は、たまりません。

「そういった場には行ったことがないから行きづらいな…」なんて方もいらっしゃると思いますので、近日中に私が出演させて頂く特撮DJイベントのレポをお届けする予定です。ご期待ください。


現代は自分が好きな事を始める時、情報が多くあるのでノウハウを収集・活用するには非常に便利な時代です。しかし、好きこそ物の上手なれということわざの通り、最初はノウハウよりも「渇望感」が大事なのではないでしょうか。

時には何かを始めた後、効率やノウハウに気を取られがちになってしまうこともあるでしょう。そんな時は、もう一度思い出してみましょう。今も私の心の隙間には、怪獣図鑑を嬉しそうに読んでいるあの頃の私がいます。

(文/MONOBRIGHT・出口博之

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