パーマ大佐の「森のくまさん」が大騒動に 過去にもあった楽曲を巡る「大戦争」
パーマ大佐の「森のくまさん」騒動が、巷を巻き込み始めている。
この出来事は、ひとことで言えば「既存の歌詞にオリジナルの部分を加えるのは許されるか否か?」ということ。著作者人格権という問題があり、森のくまさんの日本語歌詞を成立させた馬場祥弘氏の意思を無視しているのでは、と指摘が出たのだ。
この記事で騒動の白黒を決めることはできないが、ネット普及時代の新しい著作権訴訟として検証する価値は大いにある。
■類似の事件が過去にも
森のくまさんの著作権はJASRACにあるが、それとは別に著作者人格権がある。平たく言えば、歌詞の一部に手を加えるのなら作詞者の同意が必要だ。
もちろんYouTubeでは、こうしたことは見過ごされているのが現状。だが、楽曲の市場投入ともなると話は別である。「どちらが悪い」ということではないが、そこには慎重なプロセスが求められる。
また、これと似たような出来事は過去にもあった。
最も有名なのは「おふくろさん」騒動だろう。これは川内康範が作詞を手がけた「おふくろさん」という曲が、歌手の森進一により「改変」されたというもの。ただしここで言う「改変」とは歌詞そのものではなく、イントロ前の語りが川内に無断で付け足されたということだった。
川内の怒りは激しく、森を「人間失格」とまで呼んでいる。一般層からも大きな注目を浴びた事件だった。
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■泥沼の戦いに…
もうひとつ事例を挙げれば、漫画家の松本零士による「夢は時間を裏切らない」騒動がよく知られている。
歌手の槇原敬之が手がけた楽曲の中に、松本が創作した台詞が入っていたというもの。だがもちろん、槇原に盗用の意図はなく「フレーズの類似は偶然」という見解を出した。
この件に関しては槇原が名誉毀損で松本を提訴。最終的には松本が陳謝する形で終わった。
また、「楽曲の歌詞」に限らなければ「記念樹」騒動もあった。
これは服部克久が作曲した「記念樹」が、小林亜星の「どこまでも行こう」に類似していた出来事。これもやはり法廷に持ち込まれ、一審では「記念樹は盗作である」という小林の主張は認められなかった。
ところが二審では「ふたつの曲の類似性は偶然とは考えにくい」という判断が下され、さらに最高裁は服部の上告を不受理。原告である小林が勝訴した。
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■繊細な気遣いが求められる
これらの例を見ても、やはり「替え歌」の問題は非常にデリケートであることが窺える。
ユーチューバーが注目されてメジャーデビューも多くなっている今、なおさらこうした騒動が発生する可能性が高まっている。配信者の気遣いは当然だが、著作権に関する新たな法整備が求められているのかもしれない。
いずれにせよ、「森のくまさん」騒動の行方はこれからも注目だ。
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(取材・文/しらべぇ編集部・澤田真一)