WELQ問題でも注目の「無断引用」という言葉は誤り!弁護士が警鐘
『WELQ』『MERY』などのキュレーションメディアを運営していたDeNAは、13日、第三者委員会による300ページにおよぶ調査報告書を全文公開した。
それによれば、37万6,671件の記事のうち、最大で5.6%、2万件以上に「複製権/翻案権侵害の可能性がある」という。
■報道でも使われる「無断引用」
これを受けた報道やSNSで見られるのが「無断引用」という言葉だ。
たとえば時事通信は、13日配信の『74万件で権利侵害の可能性=まとめサイト問題-DeNA』と題した記事の本文中に、「〜『まとめサイト』で無断引用などを行っていた問題で〜」と記載。
同じく2月8日の配信記事では『まとめサイト、減損38億円=無断引用響く-DeNA』と、タイトルに「無断引用」という言葉を用いている。
関連記事:Twitter、突然の仕様変更にユーザーから戸惑いの声 「イラッてくる」
■DeNAの報告書では見られない表記
これは、第三者委員会の調査報告書が「無断引用と記しているため」ではなさそうだ。約300ページの中で、「無断引用」という言葉が出てくるのは、わずか1回。
キュレーションメディア『iemo』の執筆マニュアルを引用したくだりで、
「iemoでは、〜中略〜『他サイトや書籍など、既存のすべての資料からの無断引用(コピーペースト)は絶対にしないでください』〜中略〜と明記している」
と原文ママで書かれているのみだ。それ以外の部分では「無断利用」などと記されている。
関連記事:ツイッターの仕様が突如変更 フォローが親切すぎる企業アカウントが話題に
■『毎日新聞』校閲ツイッターも注意喚起
3年ほど前の投稿になるが、『毎日新聞・校閲グループ』のツイッターアカウントも、『無断引用』は誤り」と指摘している。
【直したい表現】「無断引用」→○「無断転載」 ◆「無断引用」は誤り。著作権法でいう「引用」は、同法で認められた範囲・方法で著作物を無断で利用すること。「転載」は「引用」範囲を超えた行為で、許可を得るなどの手続きが必要。無許諾の複製による利用は「無断転載」「盗用」「不適切引用」
— 毎日新聞・校閲グループ (@mainichi_kotoba) 2014年3月17日
そのためか、毎日新聞がこの発表を報じた記事では、「無断引用」という言葉は使用されていない。
関連記事:武井壮、ネット中傷投稿者と示談に言及 「そんな時代を終わらせないといけない」
■弁護士「『無断引用』は言葉の誤り」
しらべぇ取材班は、レイ法律事務所に所属する河西邦剛弁護士にも、法的見解を聞いた。
河西弁護士:著作権法32条1項に「公表された著作物は、引用して利用することができる」と規定されている以上、元の記事を作成した著作者であっても、記事を公表したことで、第三者により引用される可能性は考慮せざるを得なくなります。
もっとも、リンク元を明示する等の出所明示をし、引用部分を明確に区別して引用すること等が必要です。 そして、著作権法上の要件を満たせば、著作権者の承諾なくとも引用することができます。
「無断引用は違法だ!」という言葉を、昨今耳にするようになりましたが、そもそも著作権法上の「引用」の要件を満たせば、無断で引用したとしても著作権法上は適法です。 他方で、著作権法上の引用の要件を満たしていなければ、そもそも適法な引用に該当せず、違法な転載行為となり得ます。
なので、「無断引用」という言葉自体が、概念矛盾しているとも感じられかねないワードになっていると言えるでしょう。
・合わせて読みたい→弁護士が解説!「ツイッターの引用」って合法? 違法?