武具揃える予算が学校にない…体育教諭「銃剣道」普及しないと予測
中学校の新学習指導要領で、保健体育の「武道」に盛り込まれた種目「銃剣道(じゅうけんどう)」が話題になっている。
あまり聞きなれない銃剣道は、幕末にフランスから伝わり、日本の槍術や剣道を取り入れて成立した武道である。
剣道のような防具を身に着け、小銃の形をした木製の「木銃」を使って相手と突き合う競技だ。
旧日本軍の戦闘訓練で使われていた経緯もあり、現在では競技人口の大半が自衛隊員。そのため、「軍靴の足音が聞こえる」とネットで物議を醸した。
結局のところ、「武道」として見慣れた柔剣道なぎなたなどはかろうじて許すが「銃剣道」はグンジのにおいがするから排せ排せってケガレ意識っつーか偏見だけなんだよな。
— はよ (@hayohater) March 31, 2017
銃剣道に精神性があるかどうか、元自として質問されたら
「しごきを正当化する程度の精神性しかない」
としか言えない。自衛官としての精神は違うもので養っていった。銃剣道には何にもない。
— 木下建一郎 (@kinoken16) April 1, 2017
「銃剣道は突き主体だから危険」がクリティカルな問題じゃないんだよ。「なんであれ学校体育の現場に『安全』という概念が定着していない」ことが真に問題。組体操しかり。柔道しかり。
— 伊藤 剛 (@GoITO) April 2, 2017
ネットでは、「軍国主義を促す」との論調に反論するツイートも散見する。
教育者はどんな目で観ているのか。しらべぇ取材班は、体育教諭である20代男性に話を聞いた。
■銃剣道の明記に驚きはない
体育教諭:今回、追加される武道に、空手道、なぎなた、弓道、合気道、少林寺拳法と、話題の銃剣道の6つが明記されました。
これまでも、従来の武道科目である柔道、剣道、相撲以外の武道も学ばせてよいとされていたので、驚きはありません。事実、文科省の調べによれば、銃剣道を学ばせる学校は存在します。
ただし、剣道ですら、竹刀や防具の準備にコストがかかるので、カリキュラムに組み込む学校は少ないのが現状です。もっとも多いのは用具の少ない柔道であり、これが揺らぐことはないでしょう。
教員にも銃剣道を指導できる教員は少ないですから、わざわざ銃剣道を積極的に取り組む学校が、増えるとは思いません。大きく気にする必要はないでしょう。
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■なぜ銃剣道は明記されたのか
体育教諭:先日まで、学習指導要領改訂案には銃剣道の表記はなく、正確には「なぎなた、弓道、合気道、少林寺拳法など」となっていました。しかし、改訂案に対して意見を募った際に「国体競技でもある銃剣道を明記すべき」の声が多かったので、それを反映させたそうです。
実際、武道の授業で剣道や柔道を選んだことがあっても、相撲を選んだことのある人は少ないのではないでしょうか。しかし、国技である相撲はそれでも明記されています。
こうしたことを踏まえても、やはり銃剣道が明記されたからといって、必ずしも授業に組み込む学校が増えるわけではないと思います。
銃剣道が明記されても、予算が増えるわけではない。そのため、銃剣道の武具に予算を充てる学校が、増えることはないだろう。
仮に予算が増えたとしても新たな種類の武具の充実ではなく、もっと別に必要としているものがあるはず。
そうしたことからも、この状況で銃剣道の明記を気にする必要はなさそうなのだが…。
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(取材・文/しらべぇ編集部・モトタキ)