国体専門家とフランス人研究者が振り返る令和の一年 「不和や分断をいかに克服するか」
元号が「令和」に変わって一年。研究者たちは今の時代をどのように見ているのか。
令和の始まりで次世代を告げる明るい空気から一年が経った。この一年、大震災に始まり、新型コロナウイルスなどで苦しむなど、初めの一年から天災が続いている。令和の一年をどう見るか。亜細亜大学講師で「国体文化」編集長の金子宗徳氏とフランス人日本研究者に話を聞いた。
■劇的に変化の一年
−−−−−今上天皇が即位されてから一年が経ちましたが、どのように感じていますか。
金子:御代(御世)がわり」という言葉がありますけれども、時代・世の中が劇的に変わりつつあるのではないでしょうか。
当初は、平成以来の流れを受け継ぎつつ緩やかに変化すると思っていましたが、コロナウイルスの世界的蔓延はグローバルな経済活動、さらには日本経済に大きな打撃を与えました。また、ウイルスの発生源と目される中国を中心として、国際情勢も大きく変化しています。
また、職場における在宅勤務の推進や大学における遠隔講義の実施など、これまで「当たり前」とされていたことが変化を余儀なくされています。一時的な緊急措置として始められたものでも、利点が認められれば今後の標準になるかもしれません。
いずれにしても、日本のみならず世界は大きな転機に立ち至った、そう思っています。
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■高度成長期のツケが出てきた令和元年
−−−−−− 令和になって一年で夏の豪雨災害、コロナ禍に日本は見舞われていますが、どのように感じていますか?
金子:今年は戦後75年目にあたりますが、我が国は従来のやり方を続けられなくなっているではないでしょうか。昨年9月に襲来した台風15号の強風で千葉県市原市のゴルフ練習場の鉄柱が倒壊した事故がありました。
練習場ができたのは昭和48(1973)年とのこと、即ち、あの鉄柱は46年前に建てられたものです。鉄柱の耐用年数は50年とも言われますが、あそこは海岸に近いですから、錆びて腐食していたのかもしれません。
あのゴルフ練習場に限らず、高度成長期に建設されたビルや橋梁の多くは耐用年数を迎えており、中には危険なものも少なくないようです。今後、南海トラフや首都圏直下で大地震が発生する可能性もあり、抜本的な対策が必要です。
コロナ禍を巡る対応にしても同様です。昨今、「自粛警察の暴走」が云々されていますけれども、今回のような事態においては、然るべき手続きを経ること、一定の金銭を補償することなどを条件として、事業主に休業を命ずることが必要でした。
けれども、日本国憲法において国民の権利は不可侵とされており、国民の経済活動を制約する権利を政府は持ちません。それゆえ、「自粛」という曖昧な形を取らざるを得ず、その解釈を巡って国民同士の分断が生じているのです。
国民の自由を重視する日本国憲法が生まれた背景には、戦時下において軍部や官憲が横暴を極めたことに対する反省があるわけですけれども、当時と異なり、現在の政府は民主主義的なプロセスに基づいて運営されているわけですから、国家の存亡にかかわる緊急事態においてなお個人の自由に固執するのはわがままに過ぎると言えましょう。
日本国憲法には他にも多くの問題点があり、全面的な改正が必要ではないでしょうか。