「冬に家中の窓を開けるとゴキブリが死ぬ」ネットの噂 判明した真実に耳を疑う…
ネットで拡散される「ゴキブリが家からいなくなる方法」は正しいのか…。
年の瀬となり、そろそろ大掃除をしなければ…と思う人も多いだろう。近頃ネット上では、大掃除の際にゴキブリを一掃できる可能性を秘めた噂が飛び交っている。
この噂を検証してみると、「意外な事実」が明らかになって…。
■「ゴキブリが家からいなくなる方法」
12月初めごろから、ツイッターで「ゴキブリが家からいなくなる方法」が拡散されている。内容としては、12月~2月に家中のドアや窓など開けられる場所を全開にして、換気扇を回すというもの。この状態で3時間以上放置すると、ゴキブリの卵がすべてダメになるそうだ。
「みんなの嫌われ者」ゴキブリは主に夏場に活動し、冬はほとんど見かけないイメージ。いわばゴキブリの”オフシーズン”で、年末の大掃除のタイミングに適したこの説は不特定多数のユーザーが投稿しており、ネット上で急激に広がっている。
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■ゴキブリは冬眠する?
どことなく寒さに弱い印象のゴキブリだが、この方法は効果があるのだろうか。シェアリングテクノロジー株式会社が運営する、ゴキブリ対策で有名な「ゴキラボ」編集長の和田麻里さんに話を聞いた。
まずは、ゴキブリが冬眠するのか聞いてみた。「ゴキブリの場合、冬眠ではなく越冬休眠をします。越冬休眠とは、生物がさまざまな方法で冬を乗り切ることをいいます。一般的に家庭で見かけるクロゴキブリは生育段階で異なります。卵は越冬休眠するので寒さに強いですが、生まれたばかりの1齢幼虫は寒さに弱く越冬休眠しません。それ以降の成虫になるまでの幼虫は越冬休眠するので冬の間も生きられます」(和田さん)。
つまり、越冬休眠しない1齢幼虫と成虫は寒さでほとんど死んでしまうが、大きな幼虫や卵は越冬休眠しているためどこかで隠れて生きている可能性があるということだ。改めて、ゴキブリの生命力の強さを感じる…。
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■ネットの噂の真相は…
クロゴキブリの生態を理解したところで、ネットで出回る「あの噂」の真偽を尋ねた。前出の和田さんによれば、クロゴキブリに対しては効果がないという。むしろ「クロゴキブリは越冬休眠で寒さに強くなり、寒さを経験することで次の発育段階に進むことができるという報告(辻,2019)もあります」(前出・和田さん)と、逆効果になる可能性を指摘する。
”冬場にゴキブリ一掃説”が急激に拡散されたのには、こんな背景がありそうで…。
「飲食店に生息するチャバネゴキブリや南のほうに生息するワモンゴキブリは寒さに弱いため、そういった説が広がったのではないでしょうか。たしかに、冬場はチャバネゴキブリの対策にうってつけかもしれません」(前出・和田さん)。
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■冬のゴキブリ対策を聞いた
ただ、この季節に飲食店で3時間以上お店の窓やドアを開け放つというのは現実的ではない。前出の和田さんは、チャバネゴキブリ対策についてこう解説する。
「冬は夏と違って、チャバネゴキブリの住処が分散しにくくなります。隠れ家になりやすいのは、近くに水やエサがある暖かい場所。例えば、冷蔵庫や食器洗い乾燥機の下などです。潜伏地の目星がつけやすいので、そこにベイト剤やトラップを仕掛ければ、ある程度捕まえられるかもしれません」(前出・和田さん)。
ただ、この季節積極的に活動しないクロゴキブリはそもそも偽物のエサにも寄ってこず、あまり効果が見込めないそうだ。
「個人的には、今の時期にクロゴキブリに対する特別な対策は不要だと思います。ただ、ゴキブリは食物の臭いによってくるので、大掃除の際に戸棚の上に置いてある封の開いた乾物を処分したり、冷蔵庫の下に落ちた米粒などを掃除すると夏に向けた対策になります」(前出・和田さん)。
一般家庭では、日頃あまり掃除しない場所や疎かにしがちなところを重点的に片付けたほうがいいかもしれない。
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(取材・文/Sirabee 編集部・斎藤聡人 取材協力/シェアリングテクノロジー・ゴキラボ編集長・和田麻里さん)