悪化するのは米中の政治関係だけではない 米国民の間で高まる中国脅威論
安全保障や経済、サイバーや技術など米中対立の項目は尽きない。しかし、対立をめぐる様相は米国民の間でも近年急速に進んでいる。
米国の調査会社ギャラップは3月、米国民の対中認識に関する世論調査の結果、中国に対して好印象を抱いていると回答した比率が15%にまで落ち込んだと発表した。
■米国民の対中認識 これまででワーストを記録
ギャラップ社は1979年以来同じ調査を行っているが、これまでで最も低くなった。
また、中国の軍事力や経済力が重大な脅威だと回答した比率が6割を超えた。米国議会では民主党や共和党など党派を超えて中国脅威論が拡大し、それはトランプ政権でもバイデン政権でも変わらない。しかし、時間の経過とともに、市民レベルでもそれが先鋭化していることが今回の調査から浮き彫りとなった。
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■世界ナンバー1の座を奪われることへの危機感
米中は経済や安全保障、宇宙やサイバー、テクノロジーなど多分野で対立を深めている。そして、分野によっては既に中国が有利な立場も鮮明になってきており、米国は世界ナンバー1の座を奪われることへの危機感を露にしている。
米国は近年、HUAWEI(ファーウェイ)など中国系電子機器を締め出し、先端半導体の製造に必要な装置や技術の中国への輸出を規制するなど、経済で中国を混乱させる政策を強化している。長年国際社会で君臨してきた米国としては、まさか自らを追い抜こうとする国が出現するとは考えてもいなかっただろう。
以前、オバマ政権は中国に対して厳しい姿勢を取らず、共和党から強くバッシングを受けてきた。米国は中国が経済発展を遂げることで、自由や民主主義の価値観を受け入れるようになるだろうと部分的に期待してきた。
しかし、今日の中国はそうではない。それが上述の数字に表れているのだ。
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(取材・文/セレソン 田中)