吉野家の看板、6割超の日本人が誤認している秘密が… 「最初の1文字」に答えがあった
日本人ならば誰もが知っている牛丼チェーン・吉野家。しかし、約7割もの人々が「正しい漢字表記」を知らないと判明したのだ…。
世の中には「あれ、どっちだったかな…」とおぼろげに記憶してしまう事象が多々あるが、その正式名称が誕生した「背景」を知ると、思わず納得してしまうもの。賢明なる読者には既知の事実として映ったり、「細かすぎるだろ!」とツッコミを入れたくなるケースもあるかと思うが…決して少なくない人々が「誤って記憶している事象」の正体について探っていきたい。
今回取り上げるのは、日本を代表する牛丼チェーン・吉野家の「正しい漢字表記」についてである。
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■前回は9割超が正答したが…
Sirabee編集部では、以前にも同チェーンの漢字表記に関する調査を実施しており、その際は「吉野家」と「吉野屋」という2つの選択肢を用意。蓋を開けてみると、回答者の9割以上が正しい「吉野家」を選択していたのだ。
しかし、じつは吉野家の漢字表記には「誤解されやすい1文字」が眠っていることをご存知だろうか…。
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■正しい「よし」の表記はどちら?
今回も全国の10〜60代の男女1,000名を対象として、吉野家の漢字表記に関するアンケート調査を実施。前回は「家」の字に注目したが、今回は「吉」の字にフォーカスして「牛丼チェーン『よしのや』の『よし』の漢字はどちらか」という設問を用意した。
選択肢は、2つある横線の下部分が短い「士+口の組み合わせ」と、下部分が長い「土+口の組み合わせ」からなる漢字である。一般的な「吉」の字は下部分が短くなっているが、果たして正解はどちらか…。読者諸君も今一度、正しい表記を考えてみよう。
調査の結果、全体の66.8%が「士+口」からなる「下が短い漢字」を選択し、残る33.2%は「土+口」からなる「下が長い漢字」を選択していたことが明らかに。
確かに同チェーンの看板をよく見ると「よし」の漢字は下が長くなっているが、同社のツイッターアカウント名や、メールでのやり取りでは、いずれも下が短い「吉」の字が使用されており、事情を知らない人が見れば混乱してしまうことだろう。
じつはこちらの表記には、100年以上の長い歴史を持つ「同社ならではの事情」が存在するのだ。そこで今回は、漢字表記の詳細をめぐって「株式会社吉野家」に話を聞いてみることに…。
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■「使い分け」の理由に思わず納得
まずは同社、ならびに同チェーン名に使用されている「吉」(土+口の組み合わせ)の字の歴史・詳細について尋ねてみることに。
すると、吉野家からは「1899年(明治32年)の創業時よりこちらの漢字を使用しており、創業者の松田栄吉が『吉野家』(吉は土+口の組み合わせ)の名前で登記しました」「なぜ、こちらの表記を採用したかは明らかになっていませんが、おそらく登記の制度が明治以降に開始され、松田が登記した創業時は、土+口の組み合わせの表記で登記できたからだと思います」との回答が寄せられたのだ。
また、吉野家 担当者は「その後、昭和20年代に常用漢字を制定する際、土+口の組み合わせからなる「吉」は対象外となったため、現在は士+口の『吉』表記を一般的に感じますが、明治時代は感覚が異なっていたのかもしれません」とも補足している。
ではなぜ、ツイッターアカウント等では正式表記でない「士+口」の漢字を使用しているかというと…こちらは「文字化け対策」という事情があったのだ。
こないだもしれっと投稿したけど吉野家の「吉」は正しくは土に口の「𠮷」👀
知らなかった😳❗という人はリツイート🔄でも環境依存で表示されない場合があるから「吉」を使っているよ(*‘ω‘ *)#漢字の日 pic.twitter.com/yudgNELn7e
— 吉野家 (@yoshinoyagyudon) December 11, 2022
吉野家からは「Web上では、検索表示の最適化と文字化けを防止する狙いで『吉』の字を使用しています」との回答が寄せられている。
これは逆にいえば「Web環境以外の場では正式な漢字表記を採用している」ということ。実際にロゴマークや、メニューなどの印刷物を見ると、いずれも本来の「土+口」表記を採用していることに気付かされたのだ。
そういった事情があり、Sirabeeをはじめ他社メディアも文字化け等を避けるため、文中では「吉」の字を使用している。なお今回の調査結果を受け、吉野家からは「予想以上に多くの方が、正しい漢字表記を認識くださっていることに驚いています」とのコメントが。
また「当社ではロゴや看板と、Web上で漢字を使い分けていることから、当社の情報に接するタッチポイントが『オフラインかオンライン』かという観点で見ると、お客様ごとに漢字の認識が異なるかもしれません」とも分析していたのだった。
そうした事情がありながら、一定数のユーザーが正しい表記を理解している件については「いずれの認識だとしても、当社の名称に関して興味を持ってくださることを、大変ありがたく思っています。今後とも吉野家を、何卒よろしくお願いいたします」と、感謝のコメントを寄せてくれている。次に吉野家を利用する際は、看板の「1文字目」に注目してみてみよう。
今回のように細かい部分の表記で、多くの人が誤解していそうな商品名・企業名・チェーン名等があれば、ぜひSirabee編集部に情報を寄せてほしい。日常に隠れている小さな『気になる』の謎を共に解き明かそう。
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(取材・文/Sirabee 編集部・秋山 はじめ)
対象:全国10代~60代男女1,000名 (有効回答数)