DXで無いものが見つかる時代… ユニクロの「ステテコ」巡る長い旅路の話
【鈴木貴博『得する経済学』】「メーカー倉庫にもない売り切れ商品」はもう手にいれることができないが、DXが進んだ現代では以前と違って最後のチャンスが…。
「ああ、このサイズが残っているお店で一番近いのは聖蹟桜ヶ丘だな」
「え、聖蹟桜ヶ丘ってどうやって行けばいいの?」
これはユニクロの新宿高島屋のお店から始まった、ステテコを巡る長い旅路の話です。
■ユニクロ✕レインスプーナーのコラボ商品
5月中旬、真夏日が続いた頃の話。夏服を買いにユニクロに出かけました。そこで見つけたのがハワイをモチーフにしたちょっと素敵な絵柄のステテコでした。
じつはわたしたち一家は、まだ若いころ1年ほどハワイに住んでいたことがあります。そのため南国をモチーフにした衣服は比較的大好きなのです。
ユニクロで見つけたのがレインスプーナーというハワイでは比較的知られたアロハシャツブランドとのコラボ商品だったのですが、実はこの商品、昨年の夏に発売された旧作商品だったようです。
昨年夏はまだコロナの第7波が過去最大規模の陽性患者を出していた時期だったこともあり、あまり買い物に出かけていなかったのです。それでわたしたち家族はユニクロでレインスプーナーの商品が売られていたのにも気づかなかったのです。
そのステテコですが、昨年の商品ということでユニクロでは790円に値下げして販売されていました。安く買うチャンスですが問題はサイズが合わないこと。店頭にはMサイズとLサイズが大量に展示されていたのですが、大柄なわたしはルームウェアについてはXLサイズでゆったりと着たいと思っています。
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■他店在庫を調べる機能
こういった場合、ユニクロのアプリでまずオンラインの在庫を調べるのですが、オンラインでもすでにこのサイズは売切れです。ところがDX(デジタルトランスフォーメーション)が進んでユニクロにはまだ残された手段があります。「他の店舗の在庫を確認する」ボタンで検索をするのです。
すると今いる場所から近い順に在庫のある店舗を表示させることができます。私の欲しかったサイズは原宿店にあることがわかりました。新宿からJRで2駅隣。ちょっと足を延ばして無事購入することができました。ここまではめでたしめでたしです。
問題は一緒に買い物をしていた家内の分です。同じレインスプーナーコラボの別の商品が欲しいと思ったのですが、昨年発売の商品だけあってすでに全国的に品薄な状態です。
調べたところ家内の欲しいサイズは東京の臨海部ないしは23区外、千葉、埼玉のいくつかの店舗に在庫があることがわかったのです。それらのいくつかの候補の中で購入する候補地として浮上したのが冒頭の「聖蹟桜ヶ丘」でした。
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■最終兵器「オーダー&ピック」発動
すでに全国でほぼ品切れなうえに翌週からはユニクロの感謝祭の大セールが始まります。この商品、いつ売り切れるかわかりません。今すぐ行くべきでしょうか?
聖蹟桜ヶ丘は東京都多摩市にある駅で、新宿駅からは特急で27分とそこそこ遠い。電車賃も往復で650円かかります。普通だったらここで「790円のステテコを買うために今旅立つべきか?」という話になるのです。
ところがユニクロの場合、実はこういった場合に使える最終兵器とも言える機能があるのです。それが「オーダー&ピック」という買い方で、ユニクロアプリからまずは聖蹟桜ヶ丘店の商品在庫を買ってしまうことができるのです。
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■予定ついでにピックアップ
オンラインで購入を済ませることで、まずは在庫が確保できます。その在庫は14日以内に引き取りに行けばいい。ここがポイントで、実は首都圏の在庫のあるお店のうち聖蹟桜ヶ丘店に注目したのは、この先2週間のスケジュールの中にたまたま府中まで出かける用事が入っていたのです。
となると聖蹟桜ヶ丘は府中駅から電車でわずか6分。用事が済んだ後にちょっと足を延ばせばレインスプーナーのルームウェアをピックアップできます。これで解決ですね。
今回ご紹介した話はビジネスの言葉でいうDXの威力を示す実例です。企業が提供するデジタルツールのおかげで以前だったら諦めなければいけなかったものが手にはいるチャンスが増えてきています。お店も売れ残りを減らせますからウィンウィンの機能です。ということで今年の夏は夫婦そろってレインスプーナーのルームウェアでハワイっぽく過ごすことができそうです。
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■著者プロフィール
Sirabeeでは、戦略コンサルタントの鈴木貴博(すずきたかひろ)さんの連載コラム【得する経済学】を公開しています。街角で見かけるお得な商品が「なぜお得なのか?」を毎回経済理論で解説する連載です。
今週は、「DXが進んでいるユニクロで、品切れになった商品を手に入れる裏技」をお届けしました。
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(文/鈴木貴博)