生活のダウングレードについて「経営学の手法が使えないか」を改めて考えてみる

【鈴木貴博『得する経済学』】値上げラッシュで、それなりに生活を見直す必要が出てきた昨今。生活用品を「ダウングレード」する改善策がアリかもしれない。

2024/01/21 05:00


無印良品

「牛乳パック再生紙100%かぁ。使ってみるか?」

この日、近所の薬局でいつも買うのとは違うトイレットペーパーのパッケージをしげしげと眺めながら、独り言をつぶやいているのは私です。

普段私が使っているトイレットペーパーは大手メーカーが製造するパルプ100%のトイレットペーパーです。以前、記事で初回したように経済的にお得になるようにシングルの2倍巻の商品を常用しています。

それを使っていて、これまで困ったことはなかったのですが、紙製品も昨今のインフレに巻き込まれ、ここのところ徐々に価格が上がってきています。以前は12ロール相当(2倍巻なのでパッケージの中身は6ロールです。念のため)が、近所のお店で税別398円で特売されていたのですが、それが最近、値上げになったのです。

それで改めて考えたのですが、トイレットペーパーはダウングレードしても生活のクオリティは変わらないかもしれません。

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■より安い商品を検討

誰でも日用品に関してある程度のブランドへのこだわりがあることと思います。手洗いせっけんは花王とか、歯磨きならライオンとか、さらにいえば「ビオレの泡ハンドソープ」が良いとか「チェックアップのマイルドピュアミント」が良いとか、具体的な商品名までこだわりがあって使っている人が多いものです。

なぜならその商品の原材料なり成分なり製法なりに良さを感じていて、その商品を使うことで自分の生活水準が満足がいくと考えているからです。

そこで昨今のインフレです。生活防衛のために少しでも安いお店を探して日用品を買おうとするのですが、メーカーがじりじりと値上げをしているため、どのお店に行っても以前のような安い価格では日用品が手に入らないことになってきています。

それでこだわりの商品の中から、「これはダウングレードしても生活水準は変わらないだろう」という商品を少しずつあぶり出す作業を私は始めています。そのひとつが冒頭でお話ししたトイレットペーパーです。


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■以前重要だった「理由」が最近では…

トイレットペーパーというものは本来、直接肌に触る商品なので大手メーカーが新品のパルプからつくる肌触りの良い商品が良いという理由で、この40年間ずっと特定のブランドの商品を使ってきました。

しかし考えてみると20年前に、自宅も職場もウォシュレットが完備されていて、トイレットペーパーは最後に水分をふき取るだけの使い方をしていて、昔とは用途が違うのです。

そう考えてみると、ここは製品をダウングレードしても生活水準は下がらないかもしれません。実際、目の前にある再生パルプから作られたトイレットペーパーは、再生紙とはいえ牛乳パックからの再生なので手触りは良さそうです。それでいて価格は299円相当(正確には2倍巻シングルが24ロール相当のパッケージで598円)と、これまでの商品よりも25%安いのです。


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■「バリュー」が変わらないかどうかが変更の決め手に

今進行しているのは給与の上昇よりも価格の上昇の方が大きいタイプの“悪いインフレ”です。収入が増えない以上、生活水準を維持するためには、何か我慢をする場所が必要です。

その際のひとつの手掛かりが経営学で言う「バリューエンジニアリング」です。お金を使っている様々な物のうち「バリュー」、つまり本当の意味での価値を感じていない場所を見つけて、そこを集中してダウングレードするわけです。

今回、トイレットペーパーに注目したのはその考えからでした。他にもせっけんや歯磨きなど「どこを節約するのがいいのかな?」と思える選択肢は他にもあるのですが、ウォシュレットで以前の価値が感じられなくなったというのが決め手で、バリューエンジニアリングの観点から今回はトイレットペーパーをダウングレードすることに決めたのです。

この考え方、経営手法ではありますが、生活防衛にも役立つ手法なのではないでしょうか?


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■著者プロフィール

鈴木貴博

Sirabeeでは、戦略コンサルタントの鈴木貴博(すずきたかひろ)さんの連載コラム【得する経済学】を公開しています。街角で見かけるお得な商品が「なぜお得なのか?」を毎回経済理論で解説する連載です。

今週は「バリューエンジニアリング」をテーマにお届けしました。

・合わせて読みたい→もらえる一万円より失う3000円… 誰もが体験する「矛盾に満ちた」行動経済学

(文/鈴木貴博

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