画家・ダリと三ツ星シェフがコラボしたら… 2人の「革命児」を組み合わせたファンタジー作品 『美食家ダリのレストラン』

もし画家ダリが21世紀に生きていたら? 『美食家ダリのレストラン』が8月16日公開。

2024/08/15 08:00


『美食家ダリのレストラン』
(©ESPERANDO A DALÍ A.I.E. 2022)

1900年代後半に名を馳せたスペインの画家、サルバドール・ダリと、2000年代初頭に、同じくスペインに実在した三ツ星レストラン『エル・ブジ』のシェフ、フェラン・アドリア。この2人の天才が、もし1970年代の同時期に活躍していたとしたら?

そんなアイデアから生まれた『美食家ダリのレストラン』が8月16日から公開。色鮮やかなアートと料理が織りなすヒューマンドラマの魅力を探ってみましょう。


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■時を超えた天才のコラボ

『美食家ダリのレストラン』
(©ESPERANDO A DALÍ A.I.E. 2022)

サルバドール・ダリ(1904年~1989年)は、20世紀を代表するスペイン出身の画家として知られていますが、特に「シュルレアリスム」の旗手ともいわれています。日本語では「超現実主義」と訳されるこの芸術運動に沿うように、溶けていく時計などをモチーフに描いた幻想的なダリの絵を見たことのある人も多いでしょう。

一方、フェラン・アドリアが料理長を務めていた『エル・ブジ』は、1997年にミシュランガイドの三ツ星を取得し、「世界で一番予約が取れない」と称されたレストラン。アドリアシェフは、料理と科学を融合させて、料理界に革命を起こしたともされていますが、同店はファンに惜しまれながらも2011年に閉店しています。


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■リアルが生んだファンタジー

『美食家ダリのレストラン』
(©ESPERANDO A DALÍ A.I.E. 2022)

『美食家ダリのレストラン』は、このダリとアドリアシェフが同じ時間軸で生きていたらどうなるだろう…と考えたダビッド・プジョル監督が、映像化した作品。実際にダリと『エル・ブジ』のドキュメンタリーを制作した経験のあるプジョル監督だからこそ、思いついたアイデアだといえるでしょう。

そんな2人の天才が生きる世界線として設定されたのは、1974年のスペイン。フランコ独裁政権下の大都市バルセロナを逃れた料理人フェルナンド(フェラン・アドリアシェフのモデル/イバン・マサゲ)とアルベルト(ポル・ロペス)の兄弟は、海辺のカダケスにたどり着きます。

そこは著名な画家サルバドール・ダリが住んでいる街でした。そして兄弟を迎え入れてくれたのは、レストラン「シュルレアル」を営むジュールズ(ジョゼ・ガルシア)。ダリの大ファンであるジュールズの夢は、いつか自分のお店にダリがディナーを食べに来てくれること。そのジュールズの情熱は、次第にフェルナンドの料理にも、新たな息吹をもたらすのですが…?



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■「革命」の起こし方

『美食家ダリのレストラン』
(©ESPERANDO A DALÍ A.I.E. 2022)

個人的に一番うなったのは、時代設定の妙でした。1974年は、30年以上にわたって独裁体制を敷いたフランコの亡くなる1975年のちょうど前の年。

政治や社会体制ががらりと変化するのが「革命」であれば、ダリもアドリアシェフもまさに「革命児」。既存の古い体制を打ちこわし、新しい世界をつくる「革命」が起きるのは、いつの時代もそれまでの制度に人々がうんざりして、たまりにたまった不満が爆発する時です。そうした閉塞感が漂う時間軸の本作で、2人の「革命児」を登場させたのは、プジョル監督の希望でもあるのでしょう。

ですが、古いものが壊されて、何もなくなった後の世界に、新しい何かが生まれてこそ、真の「革命」が成功したといえます。つまり、「破壊」と「再生」をあわせて目指せば、いつか「革命」を起こせるのかもしれません。

はたして「シュルレアル」にダリの来訪はあるのでしょうか?

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『美食家ダリのレストラン』
8月16日(金)より新宿武蔵野館ほか全国公開
公式サイトはこちら

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(取材・文/Sirabee 編集部・尾藤 もあ

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