タイの失業率はなぜ4年連続で「1%以下」なの?【タル坊のアジアでなんぼやで】
タイは思い切りわかりやすく、一方で思い切り不思議な国です。この7色のケバケバ建物は何だと思います? このほど完成したタイの職業安定所、ハローワーク(正式名はスマートジョブセンター)です。
労働大臣が、若い世代が興味を持ってくれるようにキャンディのような色を採用。これで堅い政府機関が柔らかいイメージになったでしょ、と胸を張っているらしい。わかりやすい国です。
そしてどこからもクレームがない不思議な国です。タイに関わって長く経つのですが、ハローワークのケバケバデザインもさることながら、ずっと不思議に思っていたことがあります。それは失業率の低さです。
国民の裕福度の目安とされる1人当たり名目GDPのタイの順位は186か国中93位(5675ドル≒68万円・2013年度)と真ん中くらいなのですが、失業率がここ4年、0.66%、0.68%、0.73%、0.70%と1%以下で推移しているのです。
アジアでは断トツで1位、世界でも2位の低さ。これは、仕事が無い人がいないに等しい数字です。
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■タイの「ハローワーク」へ突撃インタビューに行ってみた
飛び込みで行ったのですが、副所長のティパヌンさんが快く笑顔で迎えてくれました。
「テーマパークみたいな派手なハローワークですね。どうしてまたこういうデザインになったのですか?」
「わたしたちは日本のハローワークについても勉強しました。でも、結論はタイらしく、目立つこと、記憶に残ること,来てもらうことを目指したらこうなっちゃたんです」
いますぐ広告会社にスカウトしたいような答えが返ってきた。けれん味に好感がもてる。
館内も明るく、1日の訪問者は200名を超え、訪れる人も堂々としているように見えてなかなか良い。仕事を探すという負のイメージをなくす狙いは見事に成功していました。
失業率が30%というマケドニヤやギリシャ、スペインも、見習ってみてはどうでしょう、といっても仕事がないと紹介できませんけど。
ここでは、タイ国内に限らず、シンガポール、マレーシア、香港、ベトナム等のアジア近隣国家からの求人専門のコーナーもあり、情報が大型モニターに映し出されている。
タイの失業率は低いですねという質問には、「タイ人は貧しいから働くのがあたりまえ。それとタイ人は見栄張りだから、人を多く雇う傾向にある」と言うところは口を濁されました。
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■失業率1%を切る「ワークシェアリング」の思想とは?
続いて、街に出て就業の実態を見学することにした。写真はバンコックの高級デパートのクルマ用品売り場ですが、客1人に販売員が6人いることがわかります。
日本でなら多くて2人、経営効率を優先すれば1人で十分と判断できる売り場面積です。
タイには「タンブン」という仏教文化が根付いている。タンは「施す」で、ブンは「徳」という意味。功徳を積むほどに、輪廻転生、生まれ変わると良い生活ができる、幸せになるという仏界との取引みたいな考え方だ。
たとえば貧しい人に奢る、生き物を助ける、寺院に寄付する、仕事の無い人に仕事を与える、これは徳を積むこと。このデパート経営者、タイ人は「ピーター・ドラッガー」の合理的マネジメントより、善行の積立貯金を優先する雇用方針にちがいない。
タイに出かけたら気をつけてみましょう。レストランでは客席係が異常に多いし、いつも行くゴルフ場には500人ほどのキャディさんが待機している。
給料は安くても、雇用を増やして「タンブン」を積む。見事なワークシェアリングだと考えると、失業率0.7%に納得がいくわけです。
(文/しらべぇ海外支部・タル坊)